頑張った分だけ地域が変わる【岩手】

緊急アピール、調査結果を会外発信、県議会でも紹介

 岩手県は、県央の北上市周辺を拠点とした自動車関連、電子部品の製造が中心の誘致型産業を重視する傾向が根強くありました。行政やマスコミは「岩手の基幹産業」とアピールし、学生も含め地域全体が地元の中小企業には目を向けない状況でした。

 ところが、突然の世界同時不況で一斉に1000人、2000人規模の派遣労働者の雇い止め、新規求人の停止を発表。今度は地元紙の1面を「解雇」「新規計画の凍結」などの文字が踊り、連日の報道に、その衝撃は地域全体に不安を広げました。

99%が雇用守る

 役員からはそうした状況を「いたずらに不安をかき立てていいのだろうか。むしろ、われわれは地域の雇用を守り、人を大切にする経営をしてきた。実態を調べ、闇雲に人減らしはしないと地域全体に伝えるべきではないか」との声があがり、早速雇用に関する緊急調査を行いました。

 結果は、人員削減を「既に行った」という回答はゼロ。人員削減を「考えていない」が68%、「最大の改善策を尽くしたうえで可能性もある」が31%となり、回答のあった99%が、雇用と社員の暮らしを何としても守ろうと全力で向かう姿が明らかになり、私たち自身も励まされました。

 この結果をすぐ伝えようと、マスコミ記者、行政職員など200人を超える個人に郵送。2月県議会の一般質問でも、「これが中小企業の生の姿ではないか」と紹介されました。また愛知同友会にならい、「『労使見解』を実践し、地域の雇用を守ろう」緊急アピールを年末に発表し、これが同友会への見方を変える大きなきっかけになりました。

 今年に入り、「産学官金の連携で新しい仕事と雇用をつくる緊急例会」を県内各地で開催。それぞれの機関から会場一杯の参加があり、岩手日報1面で大きくとりあげられました。

 これを読んだ県の地方振興局や産業関係の部局の方から「ずっと見てきた。あんたらが頑張った分、地域が変わる」と励まされ、こんなに周りから支えられていたのだと実感することにもなりました。

 動きがタイムリーだった、という効果もありました。しかし何より会員数が400名を超え、地道な活動の積み上げで周囲の見る目が変わっていたことが、大きく影響しました。同友会が次に何をやるのか、注目されています。

「中小企業家しんぶん」 2009年 3月 15日号より