企業と地域の担い手育む―若者と共に未来を切り開く共同求人活動【2009年度共同求人活動から】

若者の採用・育成で不況乗り切る力を

 世界的不況が続き、企業の採用意欲も大きく減退する中で取り組まれた今年の共同求人活動。各同友会では共同求人活動の意義などを改めて確認しながら、参加企業を増やす取り組みや、学校との連携、近隣同友会の連携などが進められています。

今年の求人・就職活動の動向

 厳しい経済環境の中、雇用情勢も悪化しました。2009年10月の有効求人倍率は0・44倍と過去最悪水準で、前年10月(0・80倍)と比べて半減。

 来年3月卒業予定者の就職内定状況(10月1日時点)は、大学が62・5%(前年同時期比▲7・4%)、短大が29・0%(同▲10・4%)、専門学校が43・4%(同▲2・8%)といずれも低水準。1996年度に調査が始まって以来の下落幅となっています。しかし「実態はさらに深刻」「超ウルトラ氷河期」という大学関係者も多数います。

共同求人の意義を再確認

 2月に開かれた中同協共同求人委員会では、昨年末、社会的に問題となった内定取り消し問題に対し、「新卒採用に最大限の努力を」と会内に呼びかけた委員長談話を受け、「共同求人活動の意義と役割を再度考える」をメインテーマに各同友会の現状や課題を交流。厳しい経営環境の中でも「共同求人活動を通して、若者の未来を担っていける企業づくりをしていく」ことなどが確認されました。

 9月の委員会では、さらに「雇用を守り、地域の担い手を育む『同友会共同求人の出番!』」であることが話し合われ、共同求人活動の意義を改めて確認しながら、いかに共同求人活動を広めていくかが論議されました。

 愛知同友会では、共同求人委員会からの提案により理事会で論議し、「『労使見解』を実践し、地域の雇用を守ろう」との緊急声明を発表。岩手や京都、広島などでも、「地域の雇用を守ろう」と同友会として緊急アピールを発表しました。厳しい経営環境の中、共同求人の意義や企業の社会的責任などについて改めて論議が重ねられた1年となりました。

参加企業の質量両面の強化を

 同友会の合同企業説明会の参加企業は述べ1977社(前年比81%)、Jobwayの参加企業は742社(同79%)と共に減少しました。反面、合同企業説明会への参加学生は1万8183人(前年比194%)、Jobway参加学生数は2万6269人と大幅に増加。学生や学校からの同友会に対する期待が、一段と大きくなっています。

 各同友会では共同求人参加企業の質量両面での強化が取り組まれました。岡山同友会では、「経営指針、社員教育、共同求人」の三位一体の活動を進める中で、今年の参加企業が約2・5倍に増加。埼玉同友会は、「3年後に新卒を採用できる企業」をめざして「企業基盤強化コース」を設け、中長期的に参加企業を増やす努力を始めています。

近隣同友会の連携

 近隣同友会の連携も広がってきています。5月に開かれた首都圏4同友会(東京、神奈川、千葉、埼玉)の就職情報交換会には71の大学・専門学校から90名、同友会からは41社48名が参加。首都圏合同企業説明会には83社の企業と、697名の学生が参加しました(今年で4回目)。

 関西でも5月に大阪、京都、滋賀の3同友会が初めて共同で合同企業説明会を開催し、41社の企業、241名の学生が参加。次年度も共同開催を検討中です。

 「東北の力を1つにして地域の雇用を考えていこう」と10月に開かれた宮城同友会の合同企業説明会には秋田、山形からも参加。計27社の企業に対して、学生は567名と前年比4倍以上の参加がありました。宮城同友会の呼びかけで東北ブロック共同での合同企業説明会開催をめざす動きも生まれています。

 学校との連携も強まりました。各同友会で就職ガイダンスへの講師派遣、学内での会社説明会への参加、インターンシップへの協力、就職担当者との懇談会や企業見学会などが取り組まれました。また就職指導会(研究会)等、大学就職指導部との連携も多くの同友会で行われています。

 「『隠れた魅力ある企業を探すにはJobwayを活用しなさい』と学生に話しています」(大学関係者)との声も聞かれるなど、これらの取り組みは同友会の共同求人活動に対する学校側の理解を深めるとともに、学生が中小企業の役割や働くことの意味について考える重要な機会となっています。

継続的な採用が難局を乗り切る力に

 中同協共同求人委員会や「2009全国共同求人交流会」(12月3~4日、岡山市)での論議を通じて改めて確認されたのは、共同求人活動は企業づくり・人づくり・地域づくりの総合実践であり、「同友会3つの目的」の実践そのものということです。

 「長年新卒採用を続け、経営指針や社内の教育プログラムをつくり、育児休業制度などさまざまな制度づくりにも取り組んできた。現在、価格競争ではなく、人が育っている会社に仕事が回ってくるようになった」など、長年の継続的な努力が、今の厳しい経営環境を乗り越える力になっているとの報告もあり、企業では新卒採用を、同友会では共同求人活動を継続していくことの大切さが確認されました。

若者が未来に希望の持てる社会を

 全国共同求人交流会で記念講演を行った倉敷市立短期大学教授の秋川陽一氏は、新自由主義に基づく「構造改革」と昨年来の金融危機という経済状況が、学生の中に「経済的格差」のみならず「希望格差」「夢格差」まで生み出していると指摘しました。若者が夢や希望を持てないという状況は、社会の将来にとって憂慮すべきことです。

 昨年開催された「第1回人を生かす経営全国交流会」の基調講演で、東京大学名誉教授の大田堯氏は、「すべての人間がそれぞれの持ち味を持って社会に出番を持つ(完全雇用)、これこそ憲法が保障する基本的人権の中の一番の人権と言っていいのではないでしょうか」と指摘しました。魅力ある企業をつくり、若者を採用し、育てていくことは、大きな社会的意義のある取り組みと言えます。

 それを政策的に支援していくことも重要になっています。政府も緊急雇用対策を打ち出してきていますが、「大不況の波から地域・中小企業を守り、仕事づくりへの支援を抜本的に強化すること」(中同協「2010年度国の政策に対する中小企業家の重点要望・提言」)は、若者が未来に希望のもてる社会を築いていく上でも欠かせません。

 中小企業の役割・位置づけを明確化し、国や地域の振興の柱に据えることを求める中小企業振興基本条例・中小企業憲章の制定は、「地域に人を残し、地域の活性化をめざす」共同求人活動を進める上でも重要な課題となっています。

「中小企業家しんぶん」 2009年 12月 25日号より