【同友会景況調査(DOR)概要(2010年7~9月期)】景気再後退局面入りの可能性、大

〈調査要項〉

調査時点 2010年9月5~15日
調査対象 2,432社 回答企業 963社(回答率39.6%)(建設162社、製造業321社、流通・商業293社、サービス業177社)
平均従業員数 (1)38.5人(役員含む・正規従業員)(2)34.5人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

今期一息ついても、景気腰折れ感強し

 2010年9月は百年に一度といわれたリーマン・ショックから2年という節目にあたり、菅改造内閣が発足した時点でもあります。日銀短観によれば、大企業を中心にマイナスは完全に解消されています。

 DORの7~9月期の業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は10年4~6月期の△4から0と4ポイント改善しました(図1)。業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)でも△32→△18と上昇しています。この限りでは中小企業も一息ついた形です。

 業種別にみると、製造業(13→16)、建設業(△20→△15)、流通・商業(△12→△9)、サービス業(△9→△1)とそれぞれ改善しています。地域経済圏別では北海道・東北(△13→△8)、関東(0→9)、北陸・中部(△3→4)、近畿(9→5)、中国・四国(△8→△1)、九州・沖縄(△15→△10)となっています。関東圏の急回復ぶりと近畿圏の減速ぶりが対照的です。

 しかし、10~12月期の見通しでは0→△9と悪化を見通しています。業況水準DIも△18が△25と7ポイントの悪化予想となっています。10~12月期の景気の腰折れが現実になる勢いであり、景気再後退局面入りの可能性は大ということができます。

図1

今期好転するも、冬の到来が予測される

 2010年7~9月期の売上高DI(「増加」-「減少」割合)も△6→1と回復しています。製造業(11→13)、近畿(5→13)、100人以上(18→24)で牽引している形です。しかし10~12月期の見通しは1→△8と下落が予想されています。

 経常利益DI(「増加」-「減少」割合)も前期4~6月期の△7が△1と6ポイント改善しています(図2)。製造業(10→12)、関東(△6→7)、100人以上(17→23)が引っ張る形ですが、建設業(△31→△18)、九州・沖縄(△15→△8)、20人以上50人未満(△7→△6)と上向きではあるものの水準の低い分野もあります。経常利益の10~12月期の見通しは0→△9と悪化が見込まれています。やっと水面に達した感がありましたが、またもや1~3月期の水準に逆戻りです。

図2

資金繰りの窮屈感和らぐ

 資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は10年4~6月期から6ポイント「窮屈」超過幅が縮小し△1となりました。借入難度DI(「困難」-「容易」割合)は長期(△20→△24)・短期資金(△22→△27)とも「容易」超過幅が拡大する結果となりました。このような金融緩和状況にもかかわらず、肝心の企業の資金需要は盛り上がってきません(図3)。

図3

 仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は前期4~6月期に比べ10→6と4ポイント下降しました。売上単価DI(「上昇」-「下降」割合)は △34→△29と水面下ながら3期連続で改善を見ました(図4)。「仕入単価の下降」に「売上単価の改善」という収益環境の改善がみられます。ただし、長らく続く価格競争に加え、円高の進行による安価な海外製品によるさらなる価格競争が引き起こされる可能性は高く、中小企業の体力が奪われかねません。収益環境は予断を許しません。

図4

過剰感薄らいで、雇用環境改善

 1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)及び1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)はそれぞれ△9→△4、△13→△4と改善しています。いずれも製造業がプラスに転換するなど牽引しています。

 正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)は△1→△1と水面付近に止まりましたが、臨時・パート・アルバイトDI(「増加」-「減少」割合)は△7→2と2年半ぶりにプラスに転じました。人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は20→7と、リーマン・ショック後製造業をはじめ過剰感が急激に強まっていましたが、ここに来て過剰感が薄らいできました(図5)。

図5

設備投資3割台に近づくも「様子見」

 今期の設備投資実施割合(26.9%→29.6%)は、1つの目安になっている30%に近づいてきました。次期計画割合はほぼ横ばい(24.0%→23.9%)です(図6)。設備の過不足感DIは09年4~6月期から過剰感の緩和が進み、今期はゼロとなりました。過剰感がなくなり、一部には不足感も出てはいるものの先行き不安感から「様子見の局面」にあるようです。

図6

業況の良し悪しで異なる問題点の選択

 経営上の問題点の選択として、業況の良いところは「仕入単価の上昇」、「管理費等間接経費の増加」、「従業員の不足」が指摘され、業況が芳しくない企業は「官公需の停滞」、「取引先の減少」、「大企業の進出による競争の激化」を指摘する声が多いようです。

 経営上の力点では、悪化する収益環境の中で、「新規受注(顧客)の確保」に力点を置くとする企業が増えていることがうかがえます。

「中小企業家しんぶん」 2010年 11月 5日号より