愛媛大学での同友会提供講座 6年目 【愛媛】

キャリア教育実践事例集」(発行=経済産業省・日本商工会議所)で紹介

 愛媛同友会は1994年に、全国の中小企業団体で初めて、中学生の職場体験を受け入れて以来、キャリア教育に積極的に取り組んできました。1998年からは県内4大学のインターンシップ連絡協議会事務局も務めています。こういった取り組みが評価され、2007年に文部科学大臣表彰を受けました。今回は愛媛大学での、会員を講師とした提供講座の取り組みを紹介します。

会員経営者がリレー講義

 愛媛同友会が愛媛大学と連携して実施している「愛媛大学法文学部 愛媛県中小企業家同友会提供講座」。2011年度「いま取り組むべき産学協働によるキャリア教育実践事例集」(発行=経済産業省・日本商工会議所)の中で、「全国9大学『キャリア教育』への挑戦」の特徴的な取り組みの事例として取り上げられました。(注)

 愛媛大学を含む県内の4大学は2003年度に愛媛県内4大学インターンシップ連絡協議会を立ち上げて、全学生を対象としたインターンシップに取り組んできました。愛媛同友会はその協議会の立ち上げから関わり、NPO法人えひめ中小企業支援協会を設立して、現在も事務局を担当しています。

 「提供講座」は、ここで培った経験を活かして、2007年度からスタートしたリレー講義です。地方の大学の学生にとって身近な存在であるはずなのに、あまり知られていない中小企業への理解を促すことをねらいとしています。2011年度も、経済学特講「現代中小企業論~働く事と経営の意味を考える~」(全15講義)として開講し、212名が履修しました。講師は愛媛同友会の会員9名に加え、中同協からも国吉昌晴・副会長と松井清充・事務局長が登壇しました。

(注)同実践事例集では、愛媛同友会は四国エリアでの事業実施団体として紹介されています。また各地域の協力団体として、埼玉同友会、広島同友会、沖縄同友会も紹介されています。

先輩から後輩へと推薦される講義として定着

 スタートから5年間を経て、愛媛大学側からは「就職活動に役立つ、やる気がわくなどと、先輩から後輩へと推薦される講義として定着している」という評価をいただいています。

 また、受講生からは「これまでは就職先として、公務員や大企業しかイメージしていなかったが、中小企業が社会で果たしている役割について知ることができて、視野が広がった」「仕事は何のためにするのか、企業は何のために存在するのかということが分かった」「中小企業は地域と共に生きていくということで、社会貢献に直接つながっている。仕事を通して社会に貢献できるよう、これからの進路を考えていきたい」といった感想が寄せられています。また、受講生が講師の会社の見学に訪れるなど、交流も生まれてきています。

 「提供講座」は、学生の学びの場であるだけでなく、就職活動の際に情報が少なくなりがちな中小企業の情報源でもあります。ちなみに、「提供講座」を受講した愛媛大学の学生が、卒業後に会員企業や同友会事務局に就職しているという実例も出てきています。

 愛媛同友会では、2013年度からの開始を予定している「合同企業説明会」とも絡め、新たな雇用の創出と地域活性化につなげていきたい考えです。

(5月5日号に関連記事)

産学連携で、地域と対話する同友会づくり

鎌田哲雄・愛媛同友会事務局長の談話

 学生は「提供講座」によって地域の魅力的な中小企業を知り、就職という人生設計を真剣に考えるようになります。「提供講座」は産学連携のひとつに過ぎません。同友会と会員が商品・サービスの提供、男女共同参画や障がい者雇用、景況調査など、「人が生きる経営」の考え方に基づいた優れた企業経営を行うことで、学生の信頼は高まり、大学との連携が進んでいます。「若者の中小企業に対する理解を深めるためにも、経営者による情報発信が必要」という声が出るなど、大学と同友会の双方にとって有意義な講座になっています。

愛媛同友会のキャリア教育の取り組みの経過

1994年度 松山市立東中学校と職場体験学習実施(中小企業団体として全国で最初の実施)
1998年度 松山大学でインターンシップスタート。愛媛県内4大学のインターンシップ連絡協議会の事務局担当に。
1999年度 愛媛大学でインターンシップスタート。
2000年度 愛媛県インターンシップオープンセミナーを実施(中小企業総合事業団・四国経済産業局・同友会が共催)。

「中小企業家しんぶん」 2012年 5月 15日号より