震災から1年8カ月~石巻・南三陸・気仙沼「沿岸交流会」を開催【宮城】

同友会型企業づくりで地域の復興を

 “真の復興”を胸に立ちあがる中小企業家の姿を全国に発信し、全国からの支援に感謝の意を表明しようと、宮城同友会は10月25日、石巻・南三陸・気仙沼の3支部による「沿岸交流会」を気仙沼市で開催し63名が参加しました。

 宮城沿岸の会員企業約170社は、地震・津波によって甚大な被災となりましたが、全国からの支援と、震災直後からの果敢な事業再開の取り組みにより、現在では9割以上の企業が事業再開を果たしています。

 3支部長によるパネルディスカッションで大橋清勝・石巻支部長は、震災によって情報が断絶した中、支部の広報誌『同友石巻』が貴重な情報共有の機能を果たし、支部のなかに事業再開の勇気を育んだことを報告。

 山内正文・南三陸支部長は、震災前からの地域住民とのつながりをいかし、避難所の運営や仮設商店街「復興市」の取り組みに奔走したことを報告、地域コミュニティが復興してこそ中小企業も復興できることを指摘しました。

 清水敏也・気仙沼支部長は、自社の水産加工工場が全壊的被害を受けた中で、帆布グッズ製造・販売の新事業を起こしたことを報告、「イノベーションを起こし、震災前からも変わることが求められている」と強調しました。

 コーディネーターを務めた中同協企業環境研究センターの吉田敬一座長(駒澤大学教授)は「地域とともに生きる“中小輝業”が求められている。同友会型企業づくりに確信を持ち、地域を輝かせる灯台の役割を果たしてほしい」と激励しました。

 この交流会の様子は、インターネットを通じて同時中継され、全国で視聴されました。

「沿岸交流会」の録画を以下のサイトで見ることができます。
URL:http://ustre.am/P0gJ
番組名:宮城同友会「沿岸交流会」
*視聴にはGoogle Chrome(インターネットブラウザの種類)で、最新のAdobe Flash Playerを搭載してご覧いただくことをお勧めします。

忘れない 風化させない これが私たちの根本~宮城同友会「沿岸交流会」に参加して~ 中同協中小企業憲章・条例推進本部 副本部長 杉村 征郎

 東日本大震災・原発被災から1年8カ月。いまだに34万人が避難生活を余儀なくされ、内16万人を超える福島県民は自宅に戻れるめどがたっていないという。
 中小企業にとって商圏の多くがなくなった危機感。正念場はこれからである。
 一方、遠く離れた地では関心が風化しつつある。そこで中同協では、東日本大震災復興推進本部に被災地の抱える政策的課題と原発問題やエネルギー政策をどう考えるかについて議論する研究グループ「REES」を発足させました。
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 10月25~26日は宮城同友会の「沿岸交流会」(石巻・南三陸・気仙沼)があり、企業環境研究センターの大学教授たちと共に私も参加しました。目的は、企業と地域の復興課題を現地の会員と共に考えること、今後の理論的支援の方向性を探るスタートとすることです。
 静岡から被災地まで6時間、二つの新幹線沿線の風景はビルが真っすぐ建ち、たくさんの工場や会社があり、日本経済が長年かけて築き上げた姿がありました。震災の影は全く感じられない通常の自然と人々の暮らしがある。にもかかわらず、現地では津波ですべてを失った企業、地域を立て直すのにどれだけの時間がかかるのか、元通りの生活を取り戻せるのか、誰もが確信を得られない状況に置かれているのが現実でした。
 私たちは、会員との懇談会、沿岸三支部長とのパネルディスカッション、被災企業視察など延べ7時間、現状の問題点と課題を聞くことができました。
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 「すべては縦割り行政の弊害。施策と予算をつければやったつもりの政府」「上からのプランはあっても整合性はなく不調」「国・県・市町村の管轄・権限はあちらを立てればこちらが立たずの状態」「土地のかさ上げ、上下水道、区画整理などインフラは未調整」「融資は被災前の状態に戻すだけのもの、しかも4分の1の自前資金が必要」「経営資本・ストックのすべてを流出し、二重ローンは当たり前」「リスクをとる企業、かつての優良企業しか出さない選別融資」「復興の建物、設備投資はやれず、市場への出口はふさがっている」「一年間は操業中止状態。今は稼働率・雇用は40から50%が一般的」「人口減と求職求人ミスマッチで、売上・利益は二極化」「無償提供の仮設店舗・工場は設備・原材料・人手不足」「自立できる、できない企業の格差拡大で地域も二極化」「小企業・自営業が地域になくなる危惧」。
 このような復旧の大きな妨げ、さまざまな課題があるなかで、同友会会員は総じて地域復興の柱となっています。同友会は「地域に人を残したい。街を守りたい」といういで互いに励まし合い頑張っていました。
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 東北は大震災以前から衰退していた。その状況を復旧するだけでは意味はない。沿岸各地で漁業も農業も後継者不足で悩んでいた。商店街はシャッター通りだった。電力も、魚も野菜も、労働力も東京に提供してきた。なのになぜ潤わない。
 日本は今、人間らしく生きるという根本的な転換を受け入れるべきです。中小企業憲章の精神に立った被災地目線の超法規的発想で「できることはすべてやる。変えるべきはすべてを変える」。その決意と具体的な施策を今すぐ東北に示さなければなりません。
 私たちは、岩手・宮城・福島の同友会とともに、中小企業憲章の国会決議を求めて、他団体と手を携えてすべての政党・議員に声をあげるべきだと思います。
(静岡同友会相談役理事)

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 15日号より