森は油田 熱エネルギー自給自足へ (有)内藤鋼業

【エネルギーシフトに挑戦!】第3回 愛媛県内子町

森の中の小さな町だからできること

 愛媛県内の未利用材を使い、「愛がある愛媛ペレット」を製造販売している(有)内藤鋼業(内藤昌典社長、愛媛同友会会員)は、森林率80%の愛媛県内子町で事業展開しています。

 もともとは木材加工機械、刃物を販売している会社で、製材所のおがくずの処理の一環として木質ペレット製造を提案し、現在ではペレットの製造販売だけでなく、ペレットストーブやペレットボイラー販売も手がけています。

 「森は油田のようなもので、重要な国産のエネルギー資源です。昨年度は当社で木質ペレットを2000トン製造・販売し、県外からの注文も含めると2500トンで、ペレットは全国的に足りない状況。輸送コストが高くなるため、それぞれの地域の未利用材で地元業者がペレット生産し、雇用を増やし、地域内にお金が回る仕組みを作るべき」と言います。

「えひめペレットクラブ」の立ち上げ

 木材のエネルギー利用は大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えない「カーボンニュートラル」な特性があるため、昨年2月には内藤氏が代表になり、県内ペレットユーザー63者による「えひめペレットクラブ」を立ち上げ、CO2排出権を50万円で伊予銀行に販売しました。

 これは環境省の「オフセット・クレジット(J―VER)」制度を利用したものです。

 この販売益は原木の購入やペレットクラブでエコ出前授業、ペレット工場見学資料、割り箸ペレット運動などに活用されています。また、伊予銀行は営業用ミニバイク600台の4・6カ月分を相殺、「木こり市場プロジェクト」支援も兼ねたものでした。

初年度販売ゼロから四国一の生産量へ

 (有)内藤鋼業で生産しているペレットは、スギやヒノキの未利用材を材料とした燃焼効率の高い「ホワイトペレット」で、販売価格は1キログラム50円(税別)。

 今では円安と原油高でペレットは割安となり、内藤氏の勧めでトマトやいちごなどを栽培する地元農家は、温室のボイラーを重油から木質ペレットボイラーに切り替えるようになりました。小中学校や幼稚園の町産材による建て替えもすすみ、ペレットボイラーで床暖房が導入されています。

 しかし、(有)内藤鋼業のペレット販売初年度(2006年)、ペレットはまったく売れませんでした。

 販売ルートを探しているときに、内藤氏は娘が通う小学校に愛媛県で初めてペレットストーブが導入されると聞いて、父母として見学に行き、町役場をたずね、「バイオマスタウン構想」を町が打ち出していることに驚きました。

 ところが、その構想が出された時点では、東京の会社の調査で「年間400トン製造すれば、工場が回せる」という試算があるだけでした。

 内藤氏は町内の未利用材を集め、地元工場でペレットをつくり町内企業の活性化と雇用にも結びつけていくことを町に提案。

 その後、「木こり市場」での地元未利用材の買い取りの仕組みも整備され、2010年には500トン/年だったペレットの製造量が、2011年に新しいペレット製造プラントを導入し1500トンのペレットを製造し、2013年度にプラントをメーカーリースで増設し、増産体制に入りました。今では3名の社員で、四国一の2500トン(今年度予定)を製造するまでになりました。

 ところが、未利用材が「チップ」として「発電」に利用されるようになり、地域内循環が崩れてきていると言います。

(次号に続く)

カーボンオフセットの仕組み

会社概要

社員数 15名
資本金 800万円
年商 3億5000万円
事業内容 製材・木工機械・工具販売修理ペレット製造販売
所在地 喜多郡内子町五十崎甲2126-1
電話番号 0893-44-3063
URL http://www.naito-kogyo.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2015年 1月 15日号より