社員の子どもたちも働きたいと思う企業に(前編) (有)スタプランニング 代表取締役社長 赤嶺 剛氏 (沖縄)

【黒瀬直宏が迫る 中小企業を働きがいのある職場に】

 黒瀬直宏・嘉悦大学元教授(特定非営利活動法人アジア中小企業協力機構理事長)が、中小企業の働きがいをキーワードに魅力ある中小企業を取材し、紹介する本連載。今回は、(有)スタプランニング(赤嶺剛代表取締役社長、沖縄同友会会員)の取り組み(前編)を紹介します。

デザイン性の高い商業店舗

 (有)スタプランニングの中心事業は建築の設計・施工で、インテリアデザイン業務、不動産事業、飲食店開業支援も行っています。設計・施工業務の対象は、飲食店・物販店、オフィス・クリニック・教育施設、ホテル・公共施設・住宅系に及んでいます。特に、建築の元請けとして行うデザイン性の高い商業店舗の企画、提案に関して高い評価を得ています。同社ホームページの「コンセプト」のサイトでは「決して創り手の押し付けでなく、住む人訪ねる人、使う人の立場にたって、私達は、個性的なデザインを提案してきました」とあります。

専門家集団

 同社の高い評価は社員の各種専門能力に支えられています。設計部門では1級建築士をはじめ13名の有資格者、施工部門では1級建築施工管理技士2名を初め15名、その他の部門を含むと合計42名の有資格者がいます。従業員数は15名ですから複数の資格を持つ人が少なからずいる専門家集団がスタプランニングです。会社として社員が国家資格を最低2つは取得する支援を行っています。知識や経験値ゼロの状態から国家資格を取得する社員もいます。社員が企業という場で主体的に能力を磨き合い、企業と共に成長するという組織風土があります。また、経営計画を全社員参加で作成するなど、社員主体の運営も行われています。しかし、こういう現在のスタプランニングの姿が当初から出来上がっていたわけではありません。

創業からの経緯

 赤嶺社長夫妻は共に店舗の設計・施工を行う企業に勤務、最初に夫人が独立してスタプランニングを設立(1996年)、1年後に赤嶺社長が加わりました。30歳の時でした。独立開業は19歳の時から準備をしており500万円を貯金していました。しかし、経営の知識はなく、利益と資金繰りは別ということさえ知りませんでした。顧客の倒産で資金繰りに窮し、ジーパン姿で銀行に飛び込んでも中小企業支援の行政窓口に行けと言われ相手にされず、妹さんから1000万円借りてしのいだこともありました。元の会社では営業や現場管理をやっていたため、独立した時は図面も引けず、30歳から学校に通いました。今では1級建築施工管理技士など5つの国家資格を持っています。

アトリエ系の企業、仕事は拡大

 当初は他企業の名で行う下請け仕事でしたが受注は順調でした。沖縄では住宅系の設計・施工事務所に対し専門知識の必要な店舗系の設計・施工事務所は少なく、口コミで次々に仕事が舞い込みました。夫妻で働いても寝る時間がなく、体がもたないので人を雇いました。

 企業設立には夢もありました。5~10人程度の社員で腕を磨きあうアトリエ系の企業にし、世界で羽ばたくようなデザイナーを輩出することです。このため、中途採用者には3年で独立できるような気持ちで取り組んでほしいと伝えていました。仕事も、1人が設計と施工を一貫して担当する仕組みを取りました(現在は設計と施工は分業)。自分自身は社員に独立してもらったら、40~45歳で引退するつもりでした。

 仕事は拡大しました。店舗は5~7年でリニューアルしますが、店舗のデザインには流行があり、東京から1年半~2年の遅れで沖縄に伝わります。赤嶺社長は東京、大阪、福岡に視察に行き、沖縄にも広がるだろう流行を前もって把握しました。このため、リニューアル店舗に流行の最先端を提案できたので、他の設計事務所より優位に立てました。仕事は沖縄以外にも広がり、東京、大阪、名古屋、福岡、宮崎、さらには香港、福建省でも店舗設計を行いました。忙しいが仕事は楽しく、皆で新しい素材の実験をしたり、デザインの研究もしました。社員のチームワークはよく、飲み会もよくやりました。赤嶺社長は自らもプレーヤーとして突っ走っていました。しかし、転機が訪れます。

(後編につづく)

会社概要

設立:1996年1月23日
社員数:15名
事業内容:飲食店開業支援、PPP・PFI事業、建築設計・施工、インテリアデザイン業務、不動産事業部
URL:https://stta-p.com/

「中小企業家しんぶん」 2023年 2月 15日号より