地域との共生で企業が伸びる (有)思風都 社長 土井 善子氏(京都)

地域との共生で企業が伸びる
共同作業所、高齢者施設と連携でレストラン
(有)思風都 社長 土井 善子氏(京都)

 2004年8月、レストラン「思風都(シーフード)」は、知的障害者が働く共同作業所「立翔館」と連携して、老人保健施設内に「お山のれすとらん パズル」をオープンしました。シーフードレストラン「思風都」も、店の特徴をどう打ち出して地域に根ざしていくかを考えてきました。ちょうど聾学校や盲学校がある地域に立地しており、手話も覚えるなど、自然に福祉の要素が経営の中に取り入れられてきました。

 第6期の経営指針から、基本方針の中に「食文化を通じて新しいレストラン形態を作り、社会(各種施設・団体・学校など)とネットワークを組み、新事業の幅を広げていきたい」という文言を加えました。その後、同友会メンバーである老人保健施設の理事長から「うちの施設内のレストランをやってみないか」と相談され、基本方針を実践するいい機会と考えて立ち上げたのが、この「パズル」でした。

 作業所内でそれまで箱折りの仕事をしていた人たちの挑戦が始まりました。「思風都」から調理人1人、作業所から職員が1人入り、作業所の仲間は毎日3~4人が交代で働いています。家で料理の手伝いをしたことのない人ばかりです。昼だけの営業ですが、12時には40~50人のお客様が来店します。10時に出勤して11時オープン、その間にお弁当の配達もするので結構大変です。お客様は老健施設で働いている人が8割、あとは地域の人です。

 「パズル」のねらいは、一般の企業に実習に出てもらい、そこで働けるようになることです。一般企業での就労経験を持っている人が多いのですが、いじめにあったことがトラウマになっています。それだけに、実習で「こわくはない」ことを体験してもらうことが大切なのです。第1号は、自立・就職への希望が強かったK君でした。「思風都」に実習に行き、働けるようになりました。

 こうした挑戦の過程で、当初想定していなかった成果がありました。それは「思風都」から派遣した調理人であるOさんの成長でした。障害のある仲間と共に働くレストランづくりの中で、人間的にも大きく成長し、リーダーシップを発揮できるようになりました。

 経営はきびしい状況にあり、共同作業所の職員の方と認識を一致させることが課題です。そこで「パズル」としての経営指針作成に取り組む中で、すこしずつ認識が一致するようになってきています。これには、京都同友会の障害者問題委員会もかかわっています。

 そもそも「パズル」を立ち上げる半年前から、「思風都」、共同作業所、老健施設との話しあいに委員会のメンバーも加わって検討してきたのです。そのなかで、障害者雇用のイメージが湧いてきたので検討するという人が現れたり、会員企業に幅広く障害者の実習受け入れをお願いするきっかけにもなりました。委員会では、障害者雇用や実習を可能にする経営理念があるかが問われるという議論もしており、今後、経営指針作りの中に障害者問題を位置づけてほしい、という働きかけをしていくつもりです。

「中小企業家しんぶん」 2006年 2月 25日号より