「1社1人関わる」運動を広げる~障害者自立応援委員会(愛知)

10月19~20日「第22回障害者問題全国交流会in愛知」(略称:障全交)が開催されます。開催地である愛知同友会の障害者自立応援委員会の取り組みを紹介します。


 1968年、愛知同友会は働く場を失った障害者の作業所建設運動に関わり、「慈善ではなく、末永く障害のある人たちの生活と労働を保証しよう」と全会を挙げて取り組みました。その精神を受け継ぎ、1983年に障害者問題委員会が発足します。しかし、次第に会内の関心は薄れ、委員会活動は継続していましたが、運動としての広がりは見られませんでした。

 この現状を変えようと、2015年に会員各社が1人の障害者に関わっていこうと「1社1人関わる運動」を掲げます。愛知同友会での取り組みの歴史や関わる意義を「障害者自立応援委員会がよくわかる」冊子にまとめ発信すると、「関わることならできる」と共感を呼び、委員会活動への参加者が増えてきました。

 活動内容は、障害者と出会うバリアフリー交流会、会員企業での仕事体験・実習、特別支援学校への出前講座、行政・関係団体との連携、毎月の定例会は「ここから物語がはじまる~障害者雇用実践に学ぶ」と「人間性を語る夕べ」を開催し、報告と討論で経営の人間性を深めています。

 昨年度、名古屋市が新設した「障害者雇用優良企業表彰」は、法定雇用率以下の企業を表彰するものです。公募の案内をいただいた際、企業に出向いて社員の前で表彰してほしいと申し出たところ、職員の方々の賛同を得て実現に至りました。

 第1回目の最優秀賞は、応募企業の中から愛知同友会会員の(有)進工舎(田中誠社長)が受賞し、近所の皆さんが見守る中、社員全員を前に、河村たかし市長から表彰状が渡されました。田中社長の隣で頬を紅潮させ誇らしげに立つ知的障害のT君が印象的でした。社員の向上心を支えることも「1人1社関わる運動」の重要なテーマです。

 多くの会員が気軽に参加できる企画がバリアフリー交流会です。仕事体験、模擬店、ライブなど、さまざまな場面で自然に交流が深まります。仕事体験は、会員企業が自社の仕事を持ち寄り、障害のある社員たちも加わって、特別支援学校の生徒や障害のある人たちに自社の仕事を教えます。

 仕事を体験した参加者は、生き生きと指導する社員の姿に自分の将来を重ね、社会に出て働くことへの期待と希望を膨らませます。また、社員たちは教えることで新たな可能性を見せ、社長を驚かせます。

 そして、会員の皆さんは障害のある人たちと直に接し、関わるきっかけを見つけます。最初は遠くから見ていた方が、数年後に障害者雇用に踏み出す事例も出てきました。

 そこで、障害者雇用や実習の事例と実践報告をまとめ「障害者自立応援委員会がよくわかる2」を発行しました。この冊子からは、各企業の経営者や社員の皆さんが、障害者と関わる中で、これまで気づかなかった何気ない出来事に感動や豊かさを認識する力、幸せを感受する器を大きくさせ、その人自身の人生の可能性をも広げていることが読み取れます。

 一緒に働く中で、経営理念が深まり、互いを認め支え合う社風によって強い組織に成長するなど、「見えない生産性」が生み出されています。こうした「1社1人関わる運動」の成果や教訓を「1社1人関わる・愛知モデル」として、今後の運動推進の道筋を明らかにしました。

 障害者と向き合うことは「生存条件の追求」であり、人間らしく生きることを追及する経営の真髄を学び実践することにつながります。人間尊重経営をめざす会員にとって障害者に向き合うことは必然の課題であることを発信し続けます。

「中小企業家しんぶん」 2023年 3月 25日号より