【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】条例を活用し地域のにぎわいを創出~南三陸町の挑戦【宮城】

 東日本大震災発生直後から地域の中小企業が中心となって復興に取り組んできた宮城県南三陸町。津波によって工場や家などが流され、多くの経営者にとって再起は考えづらい状況の中、同友会会員を中心に「われわれが地域の雇用を支えている。地域を支えているのはわれわれだ」との矜持(きょうじ)の元に自然と仲間が集まります。その復興の旗印となったのが中小企業振興条例でした。

 2014年に条例制定に向けた検討を始め、愛媛県東温市や北海道別海町など条例の活用が進んでいる自治体の視察を実施。その後も協議や勉強会などを重ね、2018年に「南三陸町中小企業・小規模事業者等振興基本条例」制定に至りました。

なりわいとにぎわいのあるまちづくり

 震災後、「地域を何とかしたい」という地元企業の思いから生まれた条例は、産官学が連携した生きた条例として活用が進んでいます。ひとつの活用事例が「町民運動会」です。震災によってバラバラになった地域を取り戻すため、若者や高齢者、外国人など地域で暮らすすべての人を対象とした交流の場をつくっています。

 円卓会議は行政にとっても現場の声を聞ける貴重な場となっています。常に町の課長が参加しており、地域の現状や課題を伝えて施策に反映できる仕組みがつくられています。

 また、円卓会議に向けた学習会も開催されています。2月20日に行われた学習会には、同友会会員をはじめとした地域の事業者や行政職員、学校関係者など計40名以上が参加し、南三陸町商工観光課課長が「地域課題を知り、新たな一手を考えよう(商観編)」をテーマに観光事業の観点から報告を行いました。「観光地をつくるのではなく観光を手段とした地域づくりが必要。『生きる』を豊かにする観光というテーマで取り組んでいきたい」との提起を受け、その後グループ討論・発表と同友会の例会形式で開催されました。

 現在、南三陸町は人口減少や後継者問題、観光客減少などさまざまな地域課題に直面しています。しかし、ウニを食べて育ったタコやカキなどの海産物をはじめ、多くの地域資源と観光資源を有する同町では「地域づくりとビジネスを結び付けよう」「質の高いモノを提供して宿泊客を増やそう」となりわいとにぎわいのあるまちづくりに向けて取り組みを加速させています。

「中小企業家しんぶん」 2023年 4月 15日号より