【知っておきたい採用のあれこれ】第1回
プライバシーポリシーと会社を揺るがす重大リスク~「ハラスメント」対策について
(株)エム・ソフト 顧問・社会保険労務士 西 秀樹(東京)

 昨年10月、改正職業安定法が施行され、労働者の募集を行う際のルールが変わりました。改正職業安定法について解説する本連載「知っておきたい採用のあれこれ」。第1回目は「プライバシーポリシーと会社を揺るがす重大リスク『ハラスメント』対策について」です。

 2022年10月1日、改正職業安定法により労働者の募集ルールが変わりました。また、事業主は、雇用する労働者が就職活動中の学生やインターンシップを行っている者等に対する言動について、必要な注意を払うように配慮することが望ましい、とされています。特に就職活動中の学生に対するセクシャルハラスメントなどは、正式な採用活動のみならずOB・OG訪問などの場でも問題化しています。厚生労働省は、会社を揺るがす重大なリスクとして考え、就活ハラスメント対策として面接官等に対し、応募者の個人情報の限定利用として学生の個人情報を一部非公開にするなどの対策を推奨しています。

 改正職業安定法では、個人情報の取り扱いについては「求職者の個人情報を収集する際には、業務の目的を明らかにしなければならない」と規定し、求職者の個人情報を収集する際には、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に個人情報を収集・使用・保管する業務の目的を明らかにしなければならない、と定めています。

 また、採用活動を行う求人企業は、以下の3点も改正個人情報保護法の対象となります。(1)業務の目的の達成に必要な範囲で、求職者の個人情報を収集・使用・保管しなければならない、(2)業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない、(3)求職者の個人情報をみだりに第三者に提供してはならない。

 では、改正職業安定法に対応するためには、いかにすべきでしょうか。

 2022年4月1日改正個人情報保護法第18条(利用目的の特定)、第21条、通則ガイドラインに基づき、できるかぎり利用目的を特定すること。あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならない、とされています。

 個人情報保護法第32条により、企業は個人情報取扱事業者であり、保有個人データに関して本人の知りうる状態にするためにプライバシーポリシーに個人情報取扱事業者名称、住所並びに代表者の氏名、保有個人データの利用目的、請求に応じる措置、安全管理措置等を掲載するなどの措置を講じる必要があります。

 企業は、営業活動、採用活動、従業員の労務管理などさまざまな目的で個人情報を利用しています。その個人情報が流出したり、学生への親切心からOB、OGなどがSNSやメール連絡するなど利用目的に反した行動が就活ハラスメントにもなりかねない事態を起こします。

 実際にインターンシップ生に対し、「困ったことがあったら連絡して」と女子学生に名刺と携帯電話番号を渡す行為により、女子学生が恐怖を覚え、担当教授経由でキャリアセンターのクレームが入ったこともあります。ハラスメントに対する世間の目が厳しくなっていることも理解しながら採用活動を行っていかなければなりません。

「中小企業家しんぶん」 2023年 4月 15日号より