1人当たりのGDPが台湾、韓国に追い抜かれる~アジア内での日本の繁栄の道~

 日本の1人当たり名目GDPが2022年に台湾に、23年に韓国に追い抜かれるようです。台湾が28年、韓国が27年に日本を抜く見通しでしたが、大幅に前倒しされました(日本経済研究センター、2022年12月14日付)。

 日本は1人当たりGDPが2000年に世界2位でした。1981年には1万ドルを超え、1995年には4万ドルを突破します。ピークだった2012年(4万9175ドル)の後は減少傾向に。その後、4万ドル前後を行ったり来たりするようになり、台湾、韓国に追いつかれるようになったわけです。

 昔のアジアNIEs(新興工業経済地域)という言葉が思い起こされます。台湾、韓国、シンガポールと香港です。うち、シンガポールと香港は「都市国家」で、農業部門を持たないために、1人当たりGDPは高めで、旧宗主国のイギリスや日本を既に凌駕しました。今度は、台湾、韓国でも、1人当たりGDPで日本を凌駕したと推計できるそうです(朝元昭雄「1人当たりGDP、アジアNIEsを下回った日本の再起」世界経済評論、No.2898、2023年3月27日)。

 アジアの経済発展は、日本がトップを飛ぶ雁(がん)のように雁行形態の発展が当たり前と考えていましたが(古い?)、雁がズルズルと抜かれ逆・雁行形態になってきているようです。

 近年の日本は円安傾向が顕著になり、ドル換算で1人当たりGDPの低下を招いたと思いがちですが、台湾の台湾元、韓国のウォンも対ドルで下落しており、日本の場合だけ円安で片付けられない根本的な何かがあると考えられます(ここでは、紙幅の関係から省略。大企業が中小企業の犠牲によって生産性を上げていることの問題など)。

 以上の事実は、日本の凋落を示すものです。けれども、日本は2021年で28%という世界最高の高齢社会であり、1人当たりGDPを見る場合は15~64歳の生産年齢人口で割るべきだ、とする議論もあります。1人当たりGDPを生産年齢人口で割ると、日本が依然優位であることが分かります。2030年まで韓国よりも高く、台湾には2035年になっても抜かれません。過去を見ても、2010年前半までは韓国と台湾は日本の半分以下の水準にとどまっていました。

 もう1つ。労働力については女性や高齢者で就労希望のある人を開拓すればまだまだ掘り起こせることです。

 子育て中の20~30歳代の女性が職場を離れることで労働参加率の落ちる「M字カーブ」は1981年には50%前後にとどまっていましたが、2021年では8割前後の水準にまで高まっています。

 1人当たりGDPはその国の豊かさや生産性を示す一定の指標にはなり得ますが、国の優劣を決めるものではありません。アジアの国々が経済成長する姿を参考にしながら、日本が普通の先進国として成長するのはどうか、今は普通にもなっていないのではないか、などといったことを考えたりしています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2023年 4月 15日号より