適正取引や賃上げなど議論 連合との「第9回意見交換会」【中同協】

 4月24日、中同協と日本労働組合総連合会(以下、連合)の意見交換会が東京で開催され、中同協から広浜泰久会長など6名、連合からは清水秀行事務局長など9名が参加しました。相互理解を深めるために毎年行っているもので今年で9回目となります。

 冒頭に両代表からあいさつがあったのち、4月13日に発表した「中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話」(別掲)について紹介がありました。続いて中同協と連合からそれぞれ報告がありました。中同協からは景況調査や金融に関する特別調査などの結果、政策要望の概要、中小企業魅力発信月間の取り組みなどを報告。連合からは、2023年春闘の状況や価格転嫁の円滑化に関する取り組み、「笑顔と元気のプラットフォーム」の取り組みなどについて報告がありました。

 続いて、原材料や労務費の価格転嫁の問題について、中同協からそれぞれの企業や業界の状況などを報告し、意見交換を行いました。また、連合からは中小企業振興基本条例に関する取り組みについて、地方連合会と各同友会との連携した事例などが紹介され、意見交換を行いました。

 最後にそれぞれから閉会あいさつがあり、中同協の中山英敬幹事長は「中小企業団体と労働組合が共通する課題に取り組むことは意義あること。今後も有意義な交流を進めていきたい」とあいさつしました。


中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話

 現在、多くの中小・小規模事業者(以下、中小企業)は、原材料費やエネルギー価格、労務費などの上昇と、歴史的な物価の高騰によるコスト増加を価格転嫁できず、経営環境はより一層厳しさを増している。また、人手不足の課題も深刻化する中においては、これまで以上に人への投資が求められる。

 以上を踏まえ、中小企業家同友会全国協議会と日本労働組合総連合会は、共同談話として下記の取り組みを確認した。

1.サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配と価格転嫁の促進

 「取引の適正化」を進めるためには、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配や、適切な価格転嫁によるサプライチェーン全体でのコスト負担が必須であり、とりわけ、円安などの影響による原材料やエネルギー価格が高騰する中で、振興基準の改正や業種別ガイドラインなどを踏まえて、産業の特性に合わせた働き方も含め適正化を確実に進めていく必要がある。

2.パートナーシップ構築宣言の実効性向上

 中小企業と大企業が、共に成長できる持続可能な関係を構築するためには、「パートナーシップ構築宣言」にもとづいた取り組みを進めることが重要である。

さらに、宣言の実効性を高めるためには、価格転嫁において、発注側企業の調達部門の担当者などに対し、中小企業との価格交渉時には宣言にもとづく対応を行うよう浸透させる取り組みが求められる。

3.持続的に賃上げできる環境整備

 成長と分配の好循環の実現には、経営環境の整備はもとより、中長期的な視点を持って人への投資を推し進めるとともに、賃金水準を引き上げていくことが必要であり、生産性向上や付加価値向上などの取り組みが求められる。また、政府として、ものづくり支援、事業再構築、DX・GXへの対応など、中小企業の生産性向上につながるための、人的投資、設備投資、研究開発等の支援策の強化が必要である。

 中小企業の賃上げを広げていくためには、コスト増加分の価格転嫁は必須であり、適正な価格による取引慣行が定着していくことが重要であるとの認識で一致した。

 中小企業家同友会全国協議会は、地域と中小企業が持続的に発展できる環境をめざして政策提言活動を行い、「人を生かす経営」の実践や働く環境づくりを推進している。また、日本労働組合総連合会は、働く仲間の生活を守るため、様々な行動を通じて持続的に賃上げできる環境整備に向けて取り組みを進めている。

両組織は、今後さらに連携を強化しつつ、労使共通の課題を共有し、地方経済の活性化と中小企業の経営基盤強化、持続的に賃上げできる環境整備に向けて、それぞれの立場で政府や関係省庁などへの要請に取り組む。

以上

2023年4月13日
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜 泰久
日本労働組合総連合会 会長 芳野 友子

「中小企業家しんぶん」 2023年 5月 5日号より