中同協・中小機構トップ対談【第3回】
中小企業の発展を目指し、連携した取り組みが重要
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 理事長 豊永 厚志氏
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜 泰久氏

 中小企業基盤整備機構の豊永理事長と中小企業家同友会全国協議会の広浜会長のトップ対談が行われ、同機構が運営する中小企業向けのポータルサイト「J-Net21」に掲載されました。中小機構の了解のもと3回にわたって転載します。

中小企業で働く人が誇りを持てる社会

―中小企業憲章が出会いのきっかけだったというお話がありましたが、中小企業憲章をどう評価されていますか。

広浜 憲章を基礎に中小企業政策が展開されており、憲章の制定は大きな転換点になったと感じています。反面、主語が「われわれ国民が」とはなっていません。国民全体での合意形成のもとでの憲章にすべく、運動を展開しています。中小企業の社会的地位は客観的にみて高くありません。国民の7割は中小企業で働いている。その人たちが誇りを持てる社会にしていきたい。もちろん、中小企業家として自身がもっと誇りを持てるよう研鑽しないといけない。そんな運動もしています。

豊永 中同協の会員は、高い意識を持たれている。この意識を多くの中小企業に広め、共有し、達成すると、中小企業やそこで働く人たちのイメージが変わってくる。会員以外の事業者にいかに広め、ステークホルダーに伝えていくか。その1つの出口が憲章だったと思います。中小企業振興条例なども「中小企業の役割は何か」ということを意識させる道具として提供されている。そこは、さすが中小企業家同友会だと思ってみています。

広浜 条例についても、われわれも制定の運動を展開してかなり増えてきました。ですが、作っただけでは意味がありません。憲章や条例をどのように活用していくか。そのステージに入っていかなくてはなりません。

中小企業数の減少にストップをかけたい

―中小企業の地位向上に向けて今後、どういった取り組みを進めていかれますか。

広浜 中同協がまとめた将来展望(10年ビジョン)の第1に掲げたのが「一人ひとりのすばらしさを発揮できる企業づくり」です。そんな企業が増えれば増えるほど、そういう社会になります。生活保護受給者などの就業困難者を採用している中小企業は多いのですが、経営者がうまくコミュニケーションを取りながら、すばらしさを引き出している。そんな会社が増えれば増えるほどいい社会になります。また、地域に根差している会社も多い。それぞれの地域を活性化する先頭に立っていこうと申し合わせています。

豊永 機構の中小企業へのアプローチには、ハンズオン支援や補助金交付など直接的な方法と、各地域の支援機関のとりまとめをする間接的なサポートがあります。また、支援機関の人材を育成して支援能力を高めています。いろいろな要請に対して直接・間接的に支援する取り組みは時流にかなっていると思っています。

 その中でぜひ実現したいのが、中小企業の減少を止めることです。「日本は中小企業が多すぎる」という指摘もありますが、人口1万人あたりでみると、OECD諸国の中では下から4番目くらい。私の計算では年間7万社も減っている。この流れを食い止めないと日本は元気にならない。勢いを持った中小企業が現れ、日本に波及効果を与えるようにしたい。既存の中小企業でも十分できる力はあります。そのサポートをする。そのためには、中同協と一緒に中小企業の活力を高め、経営者の矜持(きょうじ)を高めていくことが大事だと考えています。

広浜 われわれもよい会社を作るための活動・運動をする中で、いろいろ議論をしています。可能性は無限大にあります。しかし、可能性に気づいていない経営者も多い。もっと勉強しないといけない。勉強が足りないと、自社の課題が明確になりません。それでは支援があってもアプローチできず、宝の持ち腐れになってしまう。中同協もこれから中小機構との接触面積を広げていく必要があると感じています。

(了)

中小企業基盤整備機構中小企業向けのポータルサイト「J-Net21」

「中小企業の発展を目指し、連携した取り組みが重要【中同協・中小機構トップ対談】(支援)」を掲載しています。経営に役立つ最新情報を紹介しています。
j-net21.smrj.go.jp

「中小企業家しんぶん」 2023年 5月 15日号より