リカレントとリスキリング

リカレントとリスキリングという言葉をご存知でしょうか。今後の働き方や労働において重要なテーマとなっています。リカレントとは社会人になった後も教育機関や社会人向け講座などを受け、学び直すことを言います。リスキリングとは技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために新しいスキルを学ぶことを言います。似たようなところがありますが、異なる点としてリカレントは本人が主導し、リスキリングは会社が主導するという違いがあります。

 リスキリングは、2015~16年くらいから欧米で広まりました。日本でもDX(デジタルトランスフォーメーション)、IT技術の革新、AIなどによって、無くなる仕事が出てきます。今後無くなっていく可能性が高いとされる仕事からデジタルやグリーンなどの成長産業に労働力を移動させていくことが必要になってきます。これが、リスキリングが重要となる理由です。

 無くなる可能性の高い仕事では、ルーティンな業務を持つ事務職があげられます。ロボティクスプロセスオートメーション(RPA)の導入により、ルーチンの作業やデータ入力などの業務が無くなります。物流や倉庫業では、自動化技術・ロボット・ドローンの導入により、作業効率が向上し、人間が必要な業務が削減されることが予想されます。金融関係でも、オンラインバンキングや金融によるロボアドバイザーの普及により、口座や送金の処理などが自動化されることで業務が減少します。小売業でも、オンラインショッピングや自動チェックアウトシステムの普及により、人間の販売員の役割が変化しています。

 このような状況もあり、リスキリングは企業にとっても、労働者にとっても重要になってきていますが、課題も多くあります。まずは新しいスキルを習得することは簡単ではない場合があり、特に複雑な技術や専門的な知識の習得には学習の困難さが課題となります。次にリスキリングには費用と時間がかかる場合があり、また将来の需要の変化を予測する必要があることも課題です。

 しかしながら、人材不足が続く中で、作業の効率化を行うためにIT技術を導入し作業を自動化することは必須です。単純作業は自動化し、社員にリスキリングを行い、付加価値の高い仕事に移行することで、利益率を上げて、賃金アップを実施した事例などが多数出てきています。

 リスキリングといっても簡単な教育でスマホやPCだけで対応でき、手軽に導入できるDXのサービスやアプリもあります。まずは、自動化や作業効率アップを考えて、情報収集してはいかがでしょうか。

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「中小企業家しんぶん」 2023年 6月 15日号より