環境産業の見通し

 待ったなしの環境問題ですが、日本の環境産業はどうなっていくのでしょうか。

 環境省が6月に公表した「環境産業の市場規模・雇用規模等の推計結果の概要について」では、環境産業を「供給する製品・サービスが、環境保護及び資源管理に、直接的または間接的に寄与し、持続可能な社会の実現に貢献する産業」と定義しました。2000年からの国内の環境産業の市場規模は、2021年に全体で108兆908億円と前年比2.3%の増加、2000年の約1.7倍で全産業の10.5%を占め、さらに2030年から2050年にかけて123.7兆円まで拡大すると推計しています(表)。

 4つの分野で市場規模の変化を見ると、(1)環境汚染防止分野では、土壌・水質浄化や化学物質汚染防止が2014年に倍加まで伸びてきていたのが一進一退で伸びが止まり、今後はさらに停滞していくと見られますが、環境経営支援のみが50年には2000年比で倍まで伸びていく予想です(環境汚染解消で市場縮小の中、下水からリンを取り出すことが始まっていますので、農業肥料に向けての取り組みが進むことを期待します)。(2)地球温暖化対策分野はさすがに一番伸びており、クリーンエネルギーでは蓄電池が大きく伸びていきます。なお、期待される風力発電では22年に中国が3,700万㌗であるのに対し、日本は23万㌗しか導入できず、27年に710万㌗でベトナムに抜かれる予測となっており、遅れています(日本経済新聞2023年7月3日付)。省エネ分野では電化製品のみ伸びが低く、自動車の低燃費化は40%近くまで伸び、50年における市場は19.1兆円となっています。排出権取引のみ2015年以降停滞しています。(3)廃棄物処理・資源有効利用分野は少し伸びます。ほとんどの項目の伸びは低いのですが、市場規模は最大の59.3兆円で、うち最大の建築リフォーム分野のみが50年には22年比12%増と増加予測です。(4)自然環境保全分野は、エコツーリズムが減少の一方で、唯一伸びていく持続可能な農林水産業が64.7%を占め、そのうち「国産材使用」が大きく増加しています。経済波及効果で見ても、輸出の低燃費・排出車は別として、建築リフォームや省エネルギー住宅といった住宅分野が今後大きく伸びると見て間違いないでしょう。

「中小企業家しんぶん」 2023年 7月 25日号より