【戦後78年 終戦記念日特別企画】過去から学び、平和を展望する

私たち同友会は「日本経済の自主的・平和的な繁栄をめざす」ことを3つの目的の中で掲げています。8月15日に78回目の終戦の日を迎えるにあたり、あらためて平和の大切さを心に刻むべく、本号では特別企画として東京都世田谷区立平和資料館(愛称:せたがや未来の平和館)の取り組みを紹介します。

 せたがや未来の平和館は、太平洋戦争の体験や記憶を後世に伝えるとともに、市民と交流しながら実践の場となるよう恒久平和の実現に向けた活動を展開しています。

過去を知り、未来を展望する

 (1)過去を知り・感じ・考える、(2)現在を理解する、(3)未来を展望する、の3つのステップに沿って事業を展開しており、ライブラリーには、戦争体験者の手記や語り部のDVDなど貴重な資料を所蔵。幅広いテーマの書籍や映像資料なども充実させています。

 常設展示室は「平和と戦争」「世田谷の戦跡」「戦後から現代まで」「未来の平和」などのテーマに分かれ、写真や兵士の日記、千人針、衣類などの実物を展示して当時の様子を鮮明に伝えています。展示品の多くは区民などから寄贈されたもので、その貴重な資料1つ1つが戦争の凄惨(せいさん)さを物語っています。沖縄戦や広島・長崎の原爆被害についても展示するなど幅広く情報を伝えており、さらに、SDGsを通して平和について考える展示や、人権問題、環境問題など戦争以外で平和を脅かしている社会課題も多く取り上げて、平和とはどういう状態の社会なのかという問いを来館者に投げかけています。

 同資料館は、展示を通して市民や子どもたちが歴史を学び、それぞれが平和について考える場にしたいという思いで取り組んでいます。来館者から数多くの感想や意見などが寄せられますが、そのすべてに職員がコメントを添えて掲示するなど、市民との対話・交流を大事にしています。

学校や地域と連携した活動

 社会科見学の受け入れや出前授業など、子どもや若者たちが平和について知る・考える・行動に結びつけるために、学校と連携して取り組みを進めています。コロナ禍になってからは、区立小学校とオンラインで授業を実施し、戦争体験者の方の話を聞いて自由に意見交換を行いました。授業後には生徒1人1人が平和への思いを込めた絵を作成して、現在も館内に展示されています。大学とも連携しており、授業を通して大学生と「平和」について話し合う場づくりや、企画展示を作成するなどの活動も行っています。

 また、公共施設でのパネル展示や、親子向けの「平和スタンプラリー」など、地域との交流を深めながら平和について考える事業も展開しています。展示内容を見ながらクイズを解き、正解すると賞品がもらえる「クイズラリー」は、未就学児から大人まで参加できるよう5段階にレベル分けをするなど、工夫しながらさまざまな活動を展開しています。

気づき、共有し、交流する

 現代の社会課題から平和を考える取り組みとして、期間限定の企画展を開催しています。5月26日~7月31日には、世田谷区立男女共同参画センター 「らぷらす」と連携して「ジェンダーと平和」をテーマに開催しました。誰もが自分らしくイキイキと暮らせる社会をつくるために、ジェンダーの視点から平和を展望するという企画です。特徴的なのが「問いコーナー」で、普段感じているモヤモヤや展示を見ての気づき・感想などを記入して掲示することで、問題意識の共有も図っています。

 また、金沢工業大学が開発したSDGsのカードゲーム「クロス」を用いたワークショップも実施。17の開発目標ごとに具体的な課題の事例が書かれた「トレードオフカード」(例:「育児休暇を取得する社員が増加した結果、仕事が回らない部署が増え始めた」)に対し、「お笑い」「スポーツ」などさまざまなテーマの「リソースカード」を引いて、そのリソースの観点からどう解決していくかを話し合うワークショップです。アイデアを出し合って課題解決に向けた糸口を探すための取り組みで、その他にもすごろくを通して平和について考えるゲームを用意するなど、楽しみながら学び・考えられる環境をつくっています。

 「平和って何だろう?」「戦争が無ければ平和?」と来館者に問いかけているせたがや未来の平和館。過去を知り、未来を展望する活動を通して、市民と一体となって平和の尊さを語り続けています。

世田谷区立平和資料館

開館:9:00~17:00(火曜日休館。8月15日は臨時開館)
入場:無料
住所:世田谷区池尻1丁目5番27号 世田谷公園内
電話:03-3414-1530
URL:https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/002/002/003/001/d00141171.html

「中小企業家しんぶん」 2023年 8月 15日号より