中小企業の事業承継問題は廃業問題

 日本政策金融公庫総合研究所は、「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」を3月に公表しました。中小企業の経営者の高齢化が進む中で、事業承継の重要性が一層高まっており、中小企業の事業承継の見通しを把握するとともに、後継者の決定状況別の中小企業の実態を明らかにし、今後の課題について検討するために本調査を2年に1回実施しています。

 本調査の有効回答数は4,465件で、属性としては個人企業52%、法人企業48%。規模別では1~4人が65.4%、5~9人が16.5%、10~19人が9.0%、20~49人が5.8%、50人以上が3.3%となっており、従業員数9名以下が8割以上となっています。経営者の現在の年齢は、39歳以下が1.7%、40歳代で10.4%、50歳代22.5%、60歳代で26.4%、70歳以上で39.0%。60歳以上が65.4%を占めています。女性経営者の割合は7.3%です。比較的に中小企業・小規模事業者の実態を示すアンケート調査と言えます。

 後継者が決まっている(後継者本人も承諾している)「決定企業」は10.5%、事業承継の意向はあるが、後継者が決まっていない「未定企業」は20%、自分がまだ若いので今は決める必要がない「時期尚早企業」は12%、自分の代で事業をやめるつもりである「廃業予定企業」は57.4%と6割近い数字になっています。2015年、2019年の調査と比較しても、事業承継問題は悪化しています。(表1)

 廃業予定企業の経営者の年代別の状況をみると、39歳以下でも21.3%、40歳代では40.7%、50歳代で50.5%、60歳代で61.2%、70歳以上で65.0%となっており、事業承継問題は廃業問題でもあると感じます(表2)。70歳以上での後継者決定企業は13.6%となっており、事業承継問題の難しさがわかります。

「中小企業家しんぶん」 2023年 8月 25日号より