6府県合同で景況調査・記者発表【中同協関西ブロック】

 中同協関西ブロック(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)は、4~6月期の景況調査を実施し、8月8日、その結果をもとに合同記者発表を行いました(会員の40・5%にあたる、3054社から回答を得た)。

 冒頭、堂上中同協副会長が「新型コロナウイルス感染症はⅡ類からⅤ類になったことの期待がある一方で、原材料費、エネルギー、人件費の上昇分を価格転嫁できているかが焦点。中小企業の実情をつぶさに広く報道いただきたい」とあいさつを行いました。

 続いて、大阪経済大学経済学部教授の下山朗氏が調査概要について報告。売上高DI値は2020年を底に安定した回復基調にあるが、経常利益DI値は売上高DI値に比べて低くなっており拮抗状況にある。コロナ後で景気がよくなっているとの雰囲気もあるが、景況感DI値はかろうじてプラスであり、大阪ではマイナスを抜け出せていない。売上の増加要因として「営業力の強化・拡大」「新規販路・新分野の開拓」「販売・受注価格の上昇」の順に回答数が多いが、価格を上げることができているポジティブな面と価格を上げているので売上が引っ張られて伸びているというネガティブな面が存在しており、利益につながるほど売上を上げられているかが問題であると指摘。

 特別質問項目の価格転嫁では、「価格転嫁できている」「ほぼ価格転嫁できている」と回答した企業が原材料費で55・7%と一定程度転嫁できていると評価できるが、4・7%がまったく転嫁できていない。また、エネルギー費は35・7%、人件費は40・6%と価格転嫁が進んでいない。

 賃上げについては、「例年以上に賃上げする」15・5%、「例年通りに賃上げする」32・4%となり約半数の企業が賃上げを行い、その6割の企業が「基本給を引き上げる」と回答(平均賃上げ金額8922円)。賃上げの理由として、「人材確保」「物価高への対応」「士気向上」が高いが、賃上げ原資の確保については「十分ある」12・9%、「ある程度ある」44・8%の一方で、「ほとんどない」が3・8%あり、賃上げは業績向上による良い好循環ではなく、売上の拡大や価格転嫁の取り組みが決定的に重要であることが報告されました。

 その後の記者からの質疑応答では、このような景況下にあっても学び合い、業績を維持し伸ばしている事例が各同友会より紹介されました。これからも中小企業が継続して賃上げできるかが景気の好循環の鍵となります。原材料費やエネルギーだけでなく、人件費増加も含めた収益改善の対策を各社で取り組むと同時に、価格転嫁支援などの施策が求められます。

「中小企業家しんぶん」 2023年 9月 5日号より