【企業変革支援プログラムの活用】
企業変革支援プログラムで課題を発見する力を養おう

中同協は、2022年10月に『企業変革支援プログラムVer.2』を発刊しました。今回は、川中英章・中同協共同求人委員長の活用事例を紹介します。

 今回は『企業変革支援プログラム(以下、プログラム)』の活用を進めていく上で得られた気づきについてお伝えします。

 同友会では「経営指針を成文化し、その実践を進めよう!」と長年発信し続けています。しかし経営指針成文化セミナーなどに参加し、やっと指針書が完成したにも関わらず、社外はおろか、社内ですら発表せずに引き出しに収納されたり、めざしたい未来は見えたものの、その実践が進まなかったりする会員が多いのはなぜでしょうか? はっきり言うと「必要性が薄い」または「緊急性が無い」と感じているからだと考えています。

 私が実践の必要性を感じたのは、求人活動を始めたあと、採用の過程でのことです。プログラムのカテゴリー3「人を生かす経営の実践」には、「『人を生かす経営』の基本は、社員がいきいきと目標を持って自主的に働き、仕事を通して成長することができる企業づくりで、全社員の創意工夫や自主性が十分に発揮できる社風と理念を確立し、労使が高まり合いの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業となることをねらいとしています」と記述されています。私は、「いきいきと目標を持って」「自主性が十分に発揮できる社風」「活力に満ちた豊かな人間集団」などの言葉には共感しつつも、その取り組み方法はまったく分からず、プログラムの自己診断では根拠なく2点や3点を付けつつも、果たしてそれでよいのかと考えていました。

 カテゴリー3には、5つのサブカテゴリーがあります。サブカテゴリー(3)「労働環境の整備」の項目の一番は法令に則った諸規定の整備について書かれています。その実践例では「就業規則の整備と定期的な見直し」「労働契約締結」が書かれており、とにかく素直に取り組んでみようと思いつつも、正直当初この実践例が本当に人を生かす経営の実践につながるのか疑問に感じました。就業規則や労働契約を整備して、果たして活力に満ちた豊かな人間集団ができるものかと疑ったのです。しかし解説を読むと、仕事と生活の調和、快適な職場環境づくりにつながるとあり、深く考えると社員にとって就業規則の整備や労働契約の締結が生活保障の担保となり、結果安心して仕事に取り組める環境をつくり、成果をめざせるのだということに気づきました。就業規則は経営者を守る規則集ではなく、社員の生活を守る規則集であることにも気づきました。そしてわが社はこの目的の理解が決定的に欠落しているから採用した社員が不安に過ごし、直属の上司や私に迎合し、自発的な行動ができなくなっていることが分かりました。経営指針の成文化や、それに則した社員教育を行うことは大事です。とはいえ、経営指針が無いからといって法律上処罰されることはありません。しかし、就業規則が無いのは労働基準法違反です。思い起こせば、わが社は社員の採用を始めたことで重要性が明確になった課題であり、緊急に解決しなければならない問題と捉えることができたのです。

 連載の第2回目で経営労働副委員長・吉武社長が述べられている通り、私たち経営者がありたい姿に近づくための意欲は、困難に身を置き必要に駆られることであり、課題はその困難の中で必ず見いだせます。

 『企業変革支援プログラムVer.2』は、人を生かす経営の総合実践をめざす素晴らしい自己診断ツールです。どの項目もご紹介した私の事例と同様に、先輩会員の深い悩みの先に解決された経験知が集積され、提供されたツールです。ぜひ、積極的に活用して下さい。

中同協共同求人委員長 (株)EVENTOS 代表取締役 川中英章

「中小企業家しんぶん」 2023年 9月 15日号より