24年問題のその先、モノを運べない事態への対応

 残業規制がすべての分野に及ぶ2024年問題。建設業と運輸業の問題が取り上げられてきていますが、特にトラック輸送の危機が経営問題に直結します。

 働き方改革関連法に伴う「時間外労働時間の上限規制」は、中小企業では2020年4月より施行され、時間外労働時間の上限は原則として月45時間、年360時間に制限されました。また、労使間で合意した場合でも制限が設けられましたが、建設事業、自動車運転の業務、医師、⿅児島県および沖縄県における砂糖製造業には規制が5年間猶予されており、2024年4月から適用されます。2024年4月以降は、年間時間外労働時間の上限が960時間(特別条項付き36協定を締結する場合)に制限されます(他業種における年間残業時間の上限(720時間)、「月100時間未満」、「2~6カ月平均80時間以内」、「月45時間を超える月は6カ月まで」という規制は適用されません)。 問題は、ドライバー不足によって、2030年に日本全国で荷物を運ぶことができなくなるという予想がされていることです。厚生労働省によると、超過実労働時間は大型トラックドライバーで月35時間、中小型トラックドライバーで月31時間です(表1)。また、厚生労働省の別の調査結果のトーマツ資料(表2)では、時間外労働時間が1日あたり4時間超~7時間以下と回答した事業者は14%、7時間超と回答した事業者は4.3%も存在し、合計18.3%のトラック事業者において1日4時間を超えています。1カ月の労働日数を20日と仮定した場合、1日の時間外労働時間が4時間でも、年間時間外労働時間は960時間となり、18%の企業が時間外労働時間の上限規制に対応できないことを意味します。さらに野村総合研究所(NRI)の試算(表3)によると、2030年には全国で需要に対して供給が約35%不足し、特に東北や四国といった地方部の物流がより窮迫(ひっぱく)します。

 このような中で現在の物流ネットワーク維持のための有効な対策として注目されているのが、「輸配送の共同化」です。男木島のオンバ(乳母車)で島が活性化したように人力を使う仕組みをつくることや、電動自転車ばかりの保育所を活用して親の自転車配送システムをつくるなど、地域に応じた配送システムづくりに地域のインフラとしての中小企業が手を打っていく必要があります。

「中小企業家しんぶん」 2023年 9月 25日号より