【連載「わが社のSDGs」】 リサイクルで地球を守り、未来を守る (株)田丸 代表取締役社長 藤巻一史氏(山梨)

SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年を達成年限とし、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現をめざす世界共通の目標です。新連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第6回は、(株)田丸(藤巻一史代表取締役社長、山梨同友会会員)の取り組みです。

 (株)田丸は、家業の農業を継いだ藤巻氏の父が農閑期に古紙回収を手伝ったことをきっかけに製紙原料問屋を立ち上げ、1983年に創業。藤巻氏は2代目となります。現在は古紙やプラスチックのリサイクル、一般・産業廃棄物の処理をはじめ、トイレットペーパーやティッシュなど提携先が製造しているリサイクル製品の販売も行っています。

地球防衛隊

 同社はいわゆる「3K」と言われる業界で、採用には苦戦し、定着率も低いという状態でした。「子どものころはよく会社で遊んでいたので、自社に対して悪い印象はありませんでしたが、会社を継ぐつもりはありませんでした」と語る藤巻氏。一度東京で就職した後、以前から憧れていたバックパッカーになり世界中を旅しました。貧困問題や人権問題など世界で起きているさまざまな問題や課題を目の当たりにし、その経験から少しでも世の中をよくしたいと思うようになります。そして、社会課題解決のためには会社を継ぐことが一番の近道だと考え、(株)田丸に入社しました。

 その後、藤巻氏が社長に就任した際に、家族に紹介したくなるような会社にすることを目標に掲げ、社員の仕事に対する意識改善に取り組みます。意思統一の場として全体会を年に4回行い、勤続年数や安全衛生などに関する社内表彰制度の整備を行いました。また、仕事に対して誇りを持ってほしいという思いから「リサイクルでゴミを減らすことは地球を守ることにつながる。社会貢献を実感できて、その対価としてお金をもらっている。こんなにいい仕事はない」と社員に伝え、自社を「地球防衛隊」と呼んでいます。それらの思いが徐々に社内に浸透し、現在では5組の親子が社員として働いているなど、同社を「よい会社」だと思って働く社員が増えてきました。そのほかにも、待遇面の改善や給与の見直しに取り組むなど働く環境の整備を進めており、今後は新卒採用にも力を入れる計画です。

田丸グリーン基金

 2004年3月から「田丸グリーン基金」に取り組んでいます。これは社内環境税のようなもので、会社は利益の1%をめどに、パート・アルバイトを含む社員は年収の0・1%を納めます。集まった積立金は、環境保護団体への寄付や海外の植林ボランティアの費用、社内の委員会活動費などに使われます。基金の運営は社員によるグリーン委員会が行い、寄付先なども社員が決めています。

 また、社員にはなるべく年1回以上環境ボランティアへ参加してもらいます。環境ボランティアは社内委員会の活動のほかに、山梨市にある乙女高原の草刈りや遊歩道整備にも参加しています。このボランティアは乙女高原の生態系を次世代に残すために行われており、同社からは20~30名ほどが参加しています。「重労働なため社員の参加をあてにされており、活躍が評価されて社員のモチベーションにもつながっている」と藤巻氏は話します。

海外の植林ボランティアは公益財団法人と提携して実施し、学生を招待して社員と一緒にボランティアに参加してもらいます。海外ボランティアは藤巻氏自身の経験から、海外のゴミの現状を知って刺激を受けてほしいという思いから取り組みはじめました。現在までに3~4名の学生を招待して実施しています。また、提携先の製紙会社に実際に見学に行き、出荷した後どのように紙に生まれ変わるのかを学ぶなど、従業員の環境教育にも取り組んでいます。

 さらに地域との連携として、地元のクラブチームであるヴァンフォーレ甲府とSDGsパートナーを結び、「応援リサイクルボックス」という古紙回収ボックスをスーパーなどに設置しています。このボックスで回収した古紙のリサイクルによって得た利益の一部がヴァンフォーレ甲府の活動に使われ、リサイクルを通じてチームを応援することができます。また、地域の学校に対して工場見学の受け入れや有価物回収なども行っており、現在はコロナの影響を受けて形を変えるなどして試行錯誤を重ねています。

 同社の経営理念は「5Rを通じて全てのひとの幸せとみどりの地球を次世代に贈ります」です。5Rは「リフューズ、リデュース、リユース、リペア、リサイクル」と実践する順番があります。リサイクルは最後にやるべきことで、まずゴミを出さないように行動することが大切です。この経営理念には、リサイクル以外にも取り組み間口を広げたいという思いやすべての人の幸せに関わる仕事をしているという誇りが込められています。緑の地球を守り、次世代につなぐ使命を果たすために今後も(株)田丸の取り組みは続いていきます。

会社概要

設立:1983年9月
資本金:3,500万円
社員数:76名(2020年4月1日現在)
事業内容:リサイクル業、産業廃棄物収集運搬及び中間処理業、リサイクル製品製造業
URL:https://www.eco-tamaru.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2023年 10月 5日号より