【同友エコ受賞企業】<外部審査委員賞>
30年後の自社と地域を見据え、めっき・研削加工技術の本業でSDGsに貢献
(株)東洋硬化 代表取締役社長 小野 賢太郎氏(福岡)

同友エコ2022―2023受賞企業を紹介する連載。第5回となる今回は、外部審査委員賞を受賞した(株)東洋硬化(福岡同友会会員)の取り組みを紹介します。

本業の徹底がSDGsの取り組みに

 同社は1960年創業。めっき加工や研削技術による機械製品・部品を再生、強化する企業です。顧客は、地元個人客の数万円のバイク部品めっきなどから、航空機メーカーへ納入する機材部品や化学製品の海外トップシェア企業と数億円単位の法人受注まで幅広く取引しています。大手化学メーカーの製造機械部品では、めっきの表面処理によりナイロン繊維原料の収率を86%から97%まで高めて年間約22億円の費用を節減し、機械の加工スピードを数倍速くするなどの実績を持ちます。さらに、いま世界中に普及しているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)をめっき加工することで電気を通す素材にできる技術は世界6社のみで、真空成被膜までできる新技術は同社のみ。アルミよりも軽いCFRPの加工品は軽量で使用電力が圧倒的に少なくなります。

 本業の追求により「投入」も「産出」も改善して費用削減と生産性向上でお客様に貢献し、省資源化で限りある地球の資源を有効活用させ、同社の売上高付加価値率は75%に上ります。社員と地域に還元するには「企業を永続させる手段である利益を上げられてこそ」。「わが社の本業の徹底がSDGsの取り組みそのもの」だと語ります。

環境の取り組みで“選ばれる企業”に

 当初、環境への取り組みのきっかけは、「費用節減をして利益を上げたいというプアーな発想だった」と小野氏は振り返ります。同社は電力の大口需要家であり、契約電力量の超過による電気供給停止リスクの対策もあって、太陽光パネルを設置。結果、自社の使用電力の6%程度を太陽光で賄い、数百万円単位の節減になりました。現在はSBT(Science Based Targets)認定と、再エネ100宣言Re-Actionの認証も受け、本業の中で環境の数値目標を設けています。2030年までに自社使用電力の50%を再生可能エネルギー由来に切り替え、2050年に100%の達成目標を掲げています。電力会社とは再エネ契約に変え、数年後には早くも30%程度を達成する見通しです。

 さらに、同社は2年前から商品1個当たりのCO2排出削減量を納品書に明記する取り組みを始めました。まだ取引先の反響が薄いと言うものの、10年ビジョンと言わず30年先を見据えれば社会風土も変わり「絶対に必要な時代が来る」と予測し、その時にわが社が時代に先んじて顧客から“選ばれる企業”になりたいとの思いで取り組んでいます。

 また、今後の課題は、環境負荷の大きい重油電力を廃止し、「グリーン水素やグリーンアンモニアボイラーに切り替えたい」と展望を語りました。

自社だけでなく地域の未来も見据えて

 今回の受賞では、子ども食堂支援がSDGsの取り組みとして評価されました。久留米市は4人に1人近くの子どもが「何らかの貧困に関する課題に直面している」ことを憂い、「国の根幹に関わる」と小野氏は危惧します。地元の認定NPO「わたしと僕の夢」による子ども食堂への支援に関わり、自社のSDGs私募債発行で寄付もしています。「子ども食堂出身の子どもたちが健やかに育ち、将来わが社が選ばれ雇用できたら地域活性化にもなり、これほどいいことはない」。小野氏は自社の永続のみならず、地元久留米、日本社会の永続も見据えて企業経営に取り組んでいます。

会社概要

設立:1972年
資本金:1,000万円
事業内容:硬質クロムめっき・イオンプレーティング・円筒研削・溶射等
社員数:96名
URL:https://toyokoka.com/

「中小企業家しんぶん」 2023年 10月 5日号より