SDGs達成は危機的状況~継続的、根本的、変革的かつ緊急な行動を

 9月18~19日、国連は「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する首脳級会合(SDGサミット)をニューヨークで開催しました。会合ではSDGsの達成は「危機的な状況」にあると強く警鐘を鳴らしました。

 SDGsは2015年に採択されたもの。国連に加盟する全193カ国が2030年までに達成をめざしているもので、「誰一人取り残さない」などの理念の下、貧困と飢餓の撲滅、質の高い教育の普及、平和と公正、気候変動対策、ジェンダー平等、働きがいと経済成長など17の目標を掲げています。今年は2030年までの折り返し地点にあることから、取り組みの促進を図るために4年ぶりにサミットが開催されました。

 7月に発表された国連の特別報告書では、169ターゲットのなかで評価可能な約140の課題のうち、「順調に推移」は15%にとどまり、37%が「停滞か後退」しており、48%が「まずまずの進展だが、加速が必要」とされました。その背景には、深刻化する気候危機や世界経済の暗い見通し、長引く新型コロナウイルスの影響、ロシアによるウクライナ侵攻などが指摘されています。

 そのような状況を踏まえ、SDGサミットでは政治宣言が採択されました。宣言では、「SDGsの達成は危機に瀕している」と強い危機感を示し、「新型コロナウイルスの大流行以前から、世界はSDGsの大半の達成軌道から外れていた。早急な軌道修正とSDGs達成に向けた進捗の加速がなければ、私たちの世界は貧困の継続、危機の長期化、不確実性の増大に直面する運命にある」と強調しています。

 日本でのSDGs達成度はどうでしょうか。国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が6月に発表した報告書によると、日本のSDGs達成度は166カ国中21位で、前年から2つ順位が下がりました。2017年の11位をピークに低下し続けています。

 17の目標のうち、「ジェンダー平等を実現しよう」「つくる責任、つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」の5つが最低評価となりました。ジェンダー平等では、国会議員(衆院議員)の女性比率の低さや男女の賃金格差が問題とされました。気候変動対策では、化石燃料の燃焼などによる二酸化炭素排出量などの多さが問題として指摘されています。

政治宣言では、「世界が直面する危機と障害を克服するために、あらゆるレベルにおいて、また、あらゆるステークホルダーが、継続的、根本的、変革的かつ緊急な行動をとること」が必要であるとし、各国での政策推進や国際協調の強化を訴えています。

 私たち中小企業家も、政府に対してSDGsの取り組みを推進する政策の強化を求めるとともに、人権、経済・社会、地球環境などSDGsの視点で自社を再度見直し、「継続的、根本的、変革的かつ緊急な行動をとること」が求められていると言えます。(KS)

「中小企業家しんぶん」 2023年 10月 15日号より