賃上げに関する各地同友会の調査結果から

 2023年度の全国の最低賃金平均額が1004円と初めて1000円超となり、引き上げ額も全国的に過去最高となりました。また、岸田首相が8月31日に「30年代半ばまでに1500円をめざす」と表明したこともあり、企業においてはいっそう賃上げへの対応が迫られています。

 各同友会で景況調査や経営実態調査を行っており、賃上げに関しても多くの同友会で取り上げられ、会員企業の実情が紹介されています。今号では、機関誌や報告書などで発表された23年度の賃上げに関する調査結果の一部を紹介します。なお、各調査は個別に実施されたものであるため、調査時期や設問、選択肢などが異なっている点にご留意ください。

▼愛知

 23年度に賃上げを行った企業の割合は57%、現状維持が42%となっています。賃上げ内容(複数回答)は(1)「基本給の引き上げ(ベースアップ)」が61%、(2)「定期的な昇給」40%、(3)「ボーナスの引き上げ」17%、(4)「諸手当の引き上げ」15%です。

 特徴として昨年と比べて、(1)基本給の引き上げ(ベースアップ)が20ポイント上昇、(2)「定期的な昇給」は6ポイント下がっています。(3)ボーナスの引き上げ、(4)諸手当の引き上げはいずれも横ばいでした。

 今回の調査では「賃上げを行った理由」の選択項目として「物価高への対応」を加えましたが、この項目に関しては60%、「人材確保」60%、「士気向上」56%となり、これらが賃上げの大きな理由となっています。

 また「周りの企業が上げている」が昨年の10%から14%に上昇し、「政府の要請」が昨年8%から6%に低下しました。(図1)

(2月20~28日実施「賃金・労働調査」より。回答社数は1114社)

http://www.douyukai.or.jp/

▼宮崎

 23年度の賃上げ状況について「賃上げ実施を決定(予定)している」(48%)、「検討中である」(28%)との回答結果であり、賃上げが進みつつあります。

 賃上げ方法は「定期昇給のみ」(33%)のほか、「定期昇給」と「ベースアップ」の同時実施(48%)、「ベースアップのみ」(15%)の実施も進んでいます。

 賃上げの理由(複数回答)は「人材確保」(61%)、「物価高への対応」、「士気向上」(同率で54%)との回答に集約されます。建設業・製造業では「物価高への対応」との回答が目立ちました。(図2)

(23年1~3月期景況調査時実施の賃上げに関する特別調査より。448社のうち173社が回答) 集計・分析、京都橘大学准経済学部教授・小山大介氏

https://miyazaki.doyu.jp/reserch/research‐6357/

▼熊本

 現在の賃金動向について、昨年度と比較した水準を尋ねたところ、水準を「上げた」とする企業割合が6割(60%)に達しました。22年7~9月期調査においても同様の設問を行っており、それと比較すると前回もほぼ同様の60%が賃金を「上げた」としており、2年連続で過半数の企業が賃金を引き上げています。

 企業規模別にみると、従業員5人以下の小規模企業においては「上げた」との回答割合が前回から減少し30%となっています。一方で、相対的に規模の大きい6人以上の企業においては、それぞれ前回を上回る比率となっており、規模間による対応の違いが明らかとなっています。(図3)

(5月15日~6月9日実施の景況調査より。648社のうち176社が回答)集計・分析、熊本学園大学商学部准教授・足立裕介氏

http://doyu-kumamoto.gr.jp/rashin/

▼岡山

 2023年度の賃上げ(正規従業員)は、「実施した」(50%)、「実施予定」(12%)、「実施を検討中」(11%)、「実施しなかった(据え置き)」(26%)、「賃金を圧縮した」(1%)でした。

 また、賃上げの内容(複数選択)については、「基本給の一律引き上げ(ベースアップ)」(59・5%)、「定期昇給」(50%)、「諸手当の引き上げ」(19%)、「賞与(一時金)の引き上げ」(16%)などとなっています。

 賃上げをした理由(複数選択)は、「従業員のモチベーションの維持・向上」(81%)、「物価上昇への対応(社員の生活保障)」(60%)、「雇用維持(離職回避)のため」(41%)、「業界や地域の賃上げ動向を考慮」(23%)などとなっています。(図4)

(6月22日~7月24日実施の景況調査より。503社のうち102社が回答)

▼広島

 賃上げ圧力が強まる中、「賃上げした」(52%)と答えた人は半数にのぼり、半年前(46%)と比べても6ポイント増えています。賃上げした方にアップ率を聞いたところ、「3~5%」(49%)、「1~2%」(33%)で80%を超える方が5%以内というアップ率でした。

 今後、賃金を引き上げる余地はあるかを聞いたところ、「余地があり引き上げる」(11%)、「余地をつくって引き上げる」43%、「余地はないが引き上げざるを得ない」(23%)と答えた一方、「余地はなく引き上げられない」(14%)との厳しい回答がありました。(図5)

(7月1~20日実施、広島同友会政策委員会「会員企業の経営課題と政策要望のアンケート調査」より。1425名の回答)

https://www.hiroshima.doyu.jp/category/mag/

「中小企業家しんぶん」 2023年 10月 15日号より