連載「わが社のSDGs」
人生を変えた自然エネルギーとの出合い~環境にやさしい未来をつくる
ソーラーワールド(株) 代表取締役 武内 賢二氏(山形)

SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年を達成年限とし、「誰1人取り残さない」持続可能な社会の実現をめざす世界共通の目標です。新連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第7回は、ソーラーワールド(株)(武内賢二代表取締役、山形同友会会員)の取り組みです。

創業の経緯

 武内氏は高校卒業後、東京の照明器具メーカーに勤めていました。ある日、朝刊を読んでいると「太陽熱温水器」という文字が目に飛び込んできました。その瞬間、後頭部を叩かれたような衝撃が走り、「この世界で生きていく」と思ったといいます。その日のうちに退職願を提出し、新聞に掲載されていた「太陽光温水器」を取り扱う会社に入社しました。

 しかし、その会社はいわゆるブラック企業で、社員を使い捨ての歯車のように扱う売上至上主義の経営方針でした。その会社で7年働きましたが「この業界に入った理由は何だったか」と仕事観を考え直します。そして、再生可能エネルギーについて勉強していくと、利益第1ではなく純粋に環境のために活動をしている人がたくさんいることを知りました。それをきっかけに、どうやって再エネを普及していくかを考えるようになり、太陽光電池の普及を生業としている方と出会います。その方から起業を後押しされ、1997年にソーラーワールド(株)を創業しました。

しぶしぶ入会した同友会

 起業してしばらくすると、さまざまな経営課題が生じ、知人に相談すると「これ以上会社を大きくしたいなら経営の勉強をしなくてはいけない」と言われました。もともと団体やグループに所属することが嫌いでしたが、しぶしぶ同友会に入会しました。

 東日本大震災後、再生エネルギーに対する需要が高まったことで業界全体が大きく成長し、同社の売り上げも伸びました。しかしそれは市場が成長しているからであり、戦略があっての自社の成長ではなかったため、このままでは会社をつぶしてしまうと思い、経営指針をつくる会に参加。それが契機となり、本格的に同友会で学びを深めていきました。

さまざまな環境教育

 同友会に入会したからこそ実現できたのが、山形大学と連携したインターンシップです。大学1年生を対象に毎年1~2名を受け入れ、働く意義をテーマとして、自社の経営理念や何のために働いているのかを伝えます。学生からは「中小企業の魅力を知ることができた。入社したいと思った」という感想が寄せられています。

 さらに、今年は海外からのインターンシップの受け入れも行いました。同社はSNSで自然エネルギーについて発信しており、それを見たナイジェリアの方から直接実習の受け入れ依頼がありました。

 その方は今年ソーラーワールドに入社し、産業人材育成制度で来日している外国人に向けたインターンシップを企画しています。1週間のプログラムで5名を受け入れ、太陽電池を長期利用するノウハウや設置の技術を学んでもらったほか、「自国でソーラーワールドが仕事をしたらどんな役割が担えるか」を考えてもらい、最終日にプレゼン発表を行いました。このようなインターンシップのプログラムはすべて社員が運営をしています。

自然エネルギーの啓蒙・普及活動も事業の柱

 また、環境に関する書籍を中心に所蔵する図書館を運営しています。起業して間もないころに環境問題に詳しいジャーナリストと出会い、その方が引退する際に保管していた書籍を譲り受けました。活用に困っていたところ「まちライブラリー」という組織を知り、加盟して事務所に図書館を開設しました。現在はいろいろな方からの寄付で1000冊以上の書籍を扱っており、大学生や環境に興味のある方などが利用しています。

 さらに、社員や地域の方を対象とした環境教育として、ソーラーワールドクラブを年2回開催しています。毎回環境問題に関わるさまざまなテーマを設定し、ワークショップや映画上映会を行っています。

 その一環で「さくらんぼ市民協同発電所」をオープンしました。自然エネルギーの普及に賛同する市民50名と山形エネルギーネットワークとの合同出資で太陽電池を設置し、売電収益から出資者の方に年2回、地元の農家から購入した農産物をお届けしています。

 また、太陽電池を設置する際には広く参加を呼びかけ、地域の方と一緒に施行し、お子さんの参加もあったことから太陽電池のボードの裏に未来へのメッセージや絵を描くなどして楽しみながら行いました。 発電した電気は、近隣の3つの自治体と防災協定を結ぶことで、災害時に自力で電源が取れるような仕組みになっています。

 同社は、太陽光発電機器などの施工・販売のほか、必ずしも収益性を求めていない自然エネルギーの啓蒙・普及活動も事業の柱として展開しています。今年はJ―クレジットの認証を受け、山形同友会でもJ―クレジットの学習会を開催し講師として武内氏が登壇しました。

 また、県の環境アドバイザーや大学の非常勤講師も務めており、「環境問題について知ってもらい、環境保全活動へ巻き込み、持続可能なエネルギー事業を構築していくことが私の役目」と武内氏は話します。ソーラーワールド(株)はさらなる自然エネルギーの普及に努めていきます。

会社概要

設立:1997年9月
資本金:3,500万円
社員数:8名(アルバイト含む)
事業内容:太陽光発電機器、太陽熱温水器、木質バイオマスボイラーのシステム設計、施工、販売、保守、電気工事業、管工事業
URL: https://solar-world.jp

「中小企業家しんぶん」 2023年 10月 25日号より