主体者であれ~学びは広島に あなたがやらねば誰がやる~
第51回青年経営者全国交流会in広島

9月14~15日、第51回青年経営者全国交流会in広島が開催されました。今回の特集では、開催地あいさつや中同協青年部連絡会代表あいさつ、まとめ、3つの分科会の座長報告を紹介します。

開催地あいさつ

広島同友会 筆頭代表理事 粟屋 充博氏

みなさまようこそ広島にお越しくださいました。おかげさまで、青全交として過去最大規模となる2500名の参加で開催できる運びとなりました。藤岡実行委員長をはじめ青年部を中心に、広島同友会の総力を挙げて準備してきました。行き届かない点もあったかと思いますが、同友会仲間としての友情に免じてお許しいただければありがたく存じます。

本日の全体会は特別講演と記念講演という内容で企画しています。開会前には中同協の広浜会長、中山幹事長、梅田青年部連絡会代表、広島同友会代表理事3名、藤岡実行委員長、また本日ご講演頂く川野さんの計8名で平和記念公園の慰霊碑に献花をしてきました。原爆が広島に投下されて78年が経過しますが、いまだにウクライナやミャンマーなど世界各地で戦争や紛争が絶えません。今回の青全交で改めて命と平和の尊さについて考えたいと思い、特別講演も企画しました。

広島同友会は10月6日に創立50周年という大きな節目を迎えます。この青全交に参加された多くの皆さまから頂いたパワーとエネルギーを糧として、今回の学びを自社の経営はもちろん同友会活動にも生かして、100周年に向けて新たなステージへの一歩を踏み出したいと思っています。

今回ご参加いただいた全国の会員のみなさま、分科会の関係者のみなさま、本日ご講演頂くお二方、そしてこの青全交の設営に汗を流してくれた藤岡実行委員長をはじめ広島同友会青年部のみなさんにお礼を申し上げ、併せてみなさまの今後ますますのご健勝と企業の発展をお祈り申し上げて、開催地代表あいさつとさせていただきます。

第1分科会・座長報告(中同協)
多様性を生かし人と地域が輝く企業をつくろう~青年部活動と企業経営は不離一体~

パネリスト:
アール・エスホーム(株) 代表取締役 …多田 穣治氏…(徳島同友会副代表理事、中同協青年部連絡会副代表)
(株)人材Bank代表取締役社長 …渡邉 賢司氏…(岐阜同友会、中同協青年部連絡会副代表)
パネリスト・コーディネーター:
日新産業(株) 代表取締役 …橋崎 牧人氏…(兵庫同友会、中同協青年部連絡会副代表)

中同協青年部連絡会副代表である渡邉賢司氏(岐阜)、多田穣治氏(徳島)、そして私の3名が報告し、その後パネルディスカッションを行いました。

テーマを噛み砕き、「同友会やったら会社が成長する。同友会から逃げるな。同友会に逃げるな」と置き換えました。

「同友会から逃げるな」とは、会社の業績が悪い時でも、役職を引き受けるなど同友会の運動にきちんと参加をしようということです。「同友会に逃げるな」は、会社でうまくいかないことがあっても、同友会に行けば役職があってちやほやされるからそれでいいという考えはやめようということです。

渡邉氏は岐阜同友会青年部代表やブロック長の経験を経て、東海合同例会を一から立ち上げました。同友会の経験と自社の役職がリンクして、部下や上司との関わり方、そしてチームの作り方を自社で実践しました。

多田氏は徳島の青年部を作り、本気本音の関わりが絆を作っていくことを実感しました。

私はビジョンの大切さを伝えました。

最後に、同友会青年部とは何なのかという問題提起をしました。

それは心理的安全性です。もうからない世の中で、赤字で会社がうまくいっていないと意見を言えない空気を無自覚で作っていないか。同調圧力はやめ、ダメなときはダメだと話し、それを言えた人をみんなでカバーする青年部を全国各地でつくっていこう、そのようなエネルギーに満ちた思いを持つことができた分科会でした。

第3分科会・座長報告(徳島)
ありますよ!社長(あなた)を生かす経営!~自身の持つ可能性を誰よりも信じ、誰よりも爆発させよ~

報告者:(株)ハビリテ 代表取締役 太田 恵理子氏(徳島同友会青年部副部会長)
座長:(株)ナイスリフォーム 代表取締役社長 湯浅 真一郎氏(徳島同友会青年部副部会長)

「口に出した言葉から」、まさにそれを体現する報告でした。障害にまつわる絶望を希望に変え、そのたびに法律を変えて全国の保育園に医療職を配置する。その一歩として、この広島青全交で一番大きな会場をいち早く埋め、多くの方にビジョンを語りたいと宣言してスタートした分科会でした。

太田さんは普通の会社員でした。水頭症の息子を授かったことで、世界は一変します。ゼロ歳から障害のある子を預かってくれる保育園はなく、リハビリと育児に追われて仕事を辞めざるを得なくなりました。それなら、自分で作ろうと決意し、起業しましたが、理想と現実の間で現場は混乱していきます。

そのころには社員との関係は悪くなり、組織は崩壊寸前となります。苦しんだ時に入会した同友会で、指針書成文化セミナーを受講します。自分と向き合い、何のために起業したか、とことん振り返り、事業の目的が明確となりました。親子を照らす光、子どもだけではなく、自分と同じように苦しんできた親を救いたい。理念とビジョンができて、それを伝えたことで、社員との関係も徐々によくなっていきました。

それから、ビジョンの実現のためにさまざまなことに挑戦しました。2億円の借り入れをして、夢であった保育園を設立。社員と共に指針書の更新、会社の組織化、社員の夢を叶えるためのエステの開業などを行いました。

報告で伝えたかったことは、思いを持って口に出したことは叶うということです。特に伝えることが重要で、本気で実践して伝えることで、周りの人が自分のビジョンを語ってくれるようになります。まさにビジョンの力を目の当たりにした報告でした。

第5分科会・座長報告(広島)
私が変わる、ニシカンが変わる~会社はひとりじゃ変えられない、 経営者もひとりじゃ変われない~

報告者:西日本環境開発協同組合 代表理事 岸本 拓也氏(広島同友会県青年部連絡協議会副会長)
座長:旭調温工業(株) 第2営業部 営業課長 粟屋 博文氏(広島同友会広島西支部青年部会副部会長)

岸本氏が教えてくれた自己変革は、誰にも真似できないアクロバティックなものではありません。むしろその逆で、地道な小さな自己成長の積み重ねでした。その自己成長の秘訣とは、自分の理解の外にある価値観を受け入れる素直さ、そして人のアドバイスや同友会での学び・気づきを現場で実践して、うまくいくまでやり続けること。自分と異なる立場・価値観を持つ相手にリスペクト・感謝の気持ちを持って接すること。相手に求めている主体性をまずは自分が発揮して、社業と同友会活動を不離一体で取り組んでいくことにあります。

この分科会は、参加者同士の異なる価値観のふれあいの中で、自己変革のきっかけをつかんでもらうことと、明日からのよりよい実践のために、自分自身の姿勢や態度を見直すことを目的にしていました。参加者はそれぞれスタート地点も取り組む課題も違うと思います。しかし、私たちは会社をよくするという共通の課題を持ってここに集まっています。会社は1人では変えられず、経営者も1人では変われません。だからこそ、これからもお互いに関わり合い、自己成長を加速させ、1年後に宮崎の地でまたお会いしたいと思います。

青年部連絡会代表あいさつ

中同協青年部連絡会代表 梅田 益生氏

2500名という過去最高の参加者で開催することができました。藤岡実行委員長をはじめ広島同友会の皆様、そして関わってくださったすべての皆様に感謝申し上げます。

総会、全研、ブロック行事も含め、同友会には学ぶ機会が多くありますが、やはり同世代の交流で、学びを明日から実践するぞというエネルギーをくれるのは青全交です。

われわれ青年経営者は、本当にありがたい環境で学ばせていただいています。「労使見解」や『経営指針成文化と実践の手引き』など先人の経営者の方々の数々の教訓による教科書があり、学ぶ環境は整っています。しかし、私は「中小企業のおやじ」たちが生の経験を交流していることに価値があると思います。

中同協では「われわれ青年経営者で次世代に誇れる豊かな世界をつくろう」というビジョンを掲げています。青年経営者世代が学びを明日からの実践につなげ、うまくいった・いかなかったという話を交流することでまさに次世代に誇れる同友会になっていくのではないかと強く思うのです。

今回のメインテーマは「主体者であれ」。青全交で学んでいる方々は、主体者として、青全交に来られなかったメンバーを巻き込んでいってほしいと思います。エネルギー高、資源高、人手不足など、コロナ禍よりはるかに今の方が厳しい外部環境ですが、そんな時こそ、やはり同友会に来てほしいのです。今日の記念講演でもありましたが、逆境こそ自ら成長し、企業変革するチャンスです。同友会に行くと変革のチャンスがつかめる、よい会社に近づける、そんな会であらねばなりません。明日から実践し、こんな風に会社が変わったということを、1年後、宮崎の地で大いに交流したいと思います。

まとめ

中同協幹事長 中山 英敬氏

2日間のまとめを2点に整理しました。

1点目に、同友会運動は新しいステージに立っており、運動のやり方が変化しています。学びと実践により、多くの成果が見え、対外的な評価も高まっています。

昨日は20のテーマに分かれて学びを深めました。全人格的成長や自己変革、地域との関わりや未来をつくるなど、逆境を乗り切るためのテーマです。それらは、企業づくりや地域づくりの中ですべてがつながってきます。テーマごとに自社の問題から課題を明らかにし、経営指針に位置付けて取り組むことが重要です。特に地域の疲弊は重要な問題です。地域の課題を自社の課題として取り組むことは、地域で存続するための企業づくりそのものです。

私も第16分科会に参加しました。超縮小市場という絶望的な中で業界の常識を打ち破り、新しい分野に挑戦する報告でした。また、今日の記念講演も業態転換を繰り返し、企業変革をしたお話でした。共通していたことは「経営者の覚悟はありますか」という問いかけです。心が震えるぐらいに労使見解を本気で実践してきたのです。この言葉が突き刺さったのは、実践していたつもりになっていたからです。私も反省することができました。自己を省みて、実践していきましょう。

今こそ、われわれが社会や地域の課題に先頭に立って取り組むときです。地域活動の中で企業づくりを行い、経営者の仲間を増やしていく。こうした一体の運動で自社・地域・日本全体が元気になります。今回のテーマでもあるように、次代に誇れる豊かな世界のため、企業づくり・地域づくり・仲間づくりの一体とした運動の主体者であれ、ということです。

2点目は、平和問題を考えることです。同友会は理念において日本経済の自主的・平和的な繁栄をめざすと謳(うた)っています。これは「中小企業は平和な社会でこそ繁栄できる」ということです。同友会運動の最終目的は、人間が人間らしく豊かに生きられる社会をつくることです。一人ひとりが平和問題を真剣に考えることがとても重要です。

同友会では総会や全研において平和について考える分科会を設置しています。ある年の分科会で「戦争に反対し平和を求めることは人として最も自然な姿であり、美しい行為だと思います。全人類が思想信条を越えて守らなければならないものが『平和』ではないでしょうか」と訴えました。もはや戦争と平和の問題を避けて通ることはできません。次代に誇れる豊かな世界のため、自分の意思と考え、立場をはっきりと持って行動できる平和の主体者になりましょう。

「中小企業家しんぶん」 2023年 11月 5日号より