【あっ!こんな会社あったんだ】
ビジネスモデルの変革ダイバーシティ経営による伝統企業の改革―山形からめっきでレボリューション
スズキハイテック(株) 代表取締役社長 鈴木 一徳氏(山形)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「ビジネスモデルの変革」をテーマに、鈴木一徳氏(スズキハイテック(株)代表取締役社長、山形同友会会員)の実践を紹介します。

 当社は1914年創業、現存するめっき専業会社としては日本一古い会社です。私が代表に就任した2015年には仕事の海外流出で売り上げ40%減少、2018年には60%減少が見込まれるという状態でした。

 営業部門が無い、従来のめっき技術に固執した、新しいことができないという中間委託加工業で、規模縮小の選択肢もありましたが、事業と歴史を未来へ承継する責任があると思い、改革を決意しました。

多様性のある職場

 まず、多様性のある企業になって会社のネガティブなマインドを変えようと、社長に就任してすぐに外国人の採用を始めました。現在、180名のうち70名が外国人です。その上では、会社の方向性と働く目的を擦り合わせること、あらかじめ組織を変えるのではなく、だんだんと組織に適応できるようにサポートすること、お互いに尊重、理解し合うことが重要です。外国人採用で会社のマインドが主体的になり、日本人社員も真剣になり、そのあとに入る社員はこの風土になじんでいくという会社になりました。

開発主導・開発提案型へ

 そして、当社の強みと他業種の持つノウハウや外部資源と組み合わせる「オープンイノベーション」にも取り組み、今必要な技術ではなく、これから必要になる技術を考えました。自動運転化が進んで半導体デバイスの放熱、冷却が必要になることに着目し、半導体デバイスを冷やすためのめっき被膜を世界で初めて開発しました。独自性があり、なおかつ必要不可欠な技術となっています。

 工程のロボット化も進めました。当社には機械製造の技術もノウハウもないので、スタートアップ企業に入居してもらい、コラボする形です。自社開発のロボットなので、模倣することは不可能です。「オープンイノベーション」は、技術だけではなく人も巻き込む考え方なのです。

 MEMS(微小電気機械システム)分野の事業としては、当社ではめっき技術をアップデートした微細加工技術でネブライザー(ぜんそくなどの治療に使われる吸入器)に挑戦し、携帯型ネブライザーは使える薬が限られるという問題を解決するため、これまでに無い形状のメッシュを作りました。

 大事なのは、心を震わせ、開発のマインドを高める研究開発のテーマです。「お子さんやすべての患者さんのため」というキーワードのもとで、世界初の技術が生まれました。この技術は現在、ヘルスケア分野から自動車分野にも展開しています。

 生物の機能を模倣し技術転移する「バイオミメティクス」にも取り組んでおり、今一番力を入れているのが、フナムシの脚の構造を解析し、車のヘッドライトやカメラの撥水などに生かす研究です。将来の自動運転車に取り付けられるセンサーやカメラのホワイトアウト防止などにつながります。

4つの挑戦

 イノベーションには、市場変化と時代の流れに敏感であること、リスクに対して正確な理解と適切なアクションができること、社内外コミュニケーション、潜在的な顧客にどう提起するかが重要です。

 私たちは「4つの挑戦」を掲げています。誰もやっていないことに挑戦、社会ニーズにマッチした成長市場に挑戦、社会に貢献できることに挑戦、何よりも、会社も自分自身も自らとみんなが成長できることに挑戦です。山形で生まれ、山形で育ち、愛する山形で開発製造して、世界に発信していきます。このように、めっきは世界を変えることができる技術です。私たちは「めっきでレボリューション」します。

(「2023北海道・東北ブロック支部長・地区会長交流会in山形」実践報告より)

会社概要

設立:1914年
社員数:180名
事業内容:金属製品製造業(刃物、彫刻、鈑金、シャッター、金属製サッシュ、鍍金、金網)
URL:https://www.sht-net.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2023年 12月 5日号より