【同友エコ受賞企業】<同友エコ奨励賞>
地域の健康を守る薬局の環境経営への挑戦~地域の拠点を開設し、SDGsの浸透をめざす
(株)平野 代表取締役 松田 泰幸氏(愛媛)

同友エコ2022-2023受賞企業を紹介する本連載。第7回となる今回は、同友エコ奨励賞を受賞した(株)平野(愛媛同友会会員)の取り組みを紹介します。

 愛媛県今治市で調剤薬局7店舗を運営する(株)平野は、2009年から経営指針に環境問題への取り組みを明記しています。2010年からは社員全員でEco検定を受験し、現在では受験が採用条件の1つになるほどです。その狙いについて松田氏は「合格することではなく、勉強してエコに関する一定の知識を得てもらうこと」と明かします。

 その知識をベースに2013年には「エコアクション21」を取得し、以降は毎年「環境レポート」を公表。節電やCO2排出抑制、廃棄物削減に加え、毎月発行している患者向け情報誌「医薬だより」にエココーナーを設けて啓発を行っています。

なぜ、調剤薬局が環境経営を?

 そもそも、なぜ薬局が環境問題に取り組んでいるのでしょうか。

 松田氏の義父である先代の平野啓三氏(現会長)は「私達は常に学習に努め、社員満足と資質向上を原動力に、今治の地に根を張った薬局業務を創造発展させ、保険調剤&ヘルスケアで地域の皆様のQOL(生活の質)の向上に貢献します」を経営理念に掲げ、全国の同友会会員の先進事例に学び、自社で実践し続けてきました。「毎年、中同協定時総会議案集の『情勢と展望』を読むことで、環境経営に取り組む必要性が理解できた」と平野氏。地域の健康を守る薬局として、健康と切り離すことができない環境問題に早くから取り組んできたのです。

SDGsが社内に浸透、普通のことに

 後継者として平野氏と共に同友会で学んできた松田氏は、2017年に代表取締役に就任。翌年より全社でSDGsへの取り組みを開始しました。自社にSDGsを取り入れるにあたり、まず実施したのは、普段の仕事がSDGsのどのゴールにつながるのかというひもづけ作業です。「SDGsは決して新しい考え方ではなく、自分たちの仕事の延長線上にある」という考えのもと、ワークショップを行いました。この時に大きな役割を果たしたのが、SDGs担当になった新入社員たちです。「誰もが『SDGsって何?』という状態の中、同友会の勉強会にも参加するなど、一生懸命学んで発表する彼女たちの頑張りを見て、社内に火がついた」と松田氏。担当の1人である土井瑛莉子さんは「今は社内でSDGsが普通のことになり、特別なことをしているという意識はないほど」と話してくれました。

「平野みらい薬局」を地域の拠点として、未来へ

 取り組みを継続していくために年3回の全社会議を行い、PDCAを回しています。その中で出てきた「こんな薬局があったらいいな」という思いが結実したのが、2019年にオープンした「平野みらい薬局」です。木材を有効活用するCLT工法を用い、GEOパワーシステム(地中熱)や太陽光発電パネルなどクリーンエネルギーを採用。店内にはエコショップも開設しました。SDGsを広めるための「地域ESD活動拠点」にも登録し、親子向けワークショップなども実施しています。病気の時に行く所という薬局のイメージを脱し、訪れた人や働く人が健康や環境のことを身近に感じられる拠点として存在感を発揮しているのです。

 「自社単体で取り組めることは小さくても、それをやる人が増えれば大きな力になる」と松田さん。「今後は自社の今の状態を維持しつつ、地域でSDGsに取り組む人や企業を増やしていきたい」と力強く語ってくれました。

会社概要

設立:1982年
事業内容:調剤薬局
社員数:35名(正社員31名、パート4名)
URL:https://job.hirano-pharmacy.com/

「中小企業家しんぶん」 2023年 12月 5日号より