社員と共に成長する会社をめざす 三位一体の経営実践
(株)ブンカ巧芸社 代表取締役社長 峯元 信明氏(中同協共同求人副委員長/鹿児島同友会副代表理事)

 当社の主力事業は看板の企画や設計、製作、保守です。全部で80名ほど社員がいますが、年代や職種はさまざまです。社員の約4分の1は女性で、外国人も共に働いています。

思いの共有でコロナ禍を乗り切る

 2020年はコロナ禍の影響を受けて売り上げが大きく減少しました。これからどうなるのか大きな不安を感じていましたが「社員一丸となりこの難局を乗り越えよう」というテーマを掲げて全社で思いを共有し、アクリルパーテーションの製作や広報活動を行いました。また、困っている人を元気にしたいと考え、飲食業応援ステッカーの配布や学校への教材提供にも取り組み、自分たちの仕事が地域の役に立っていることを実感できました。こうした対応でコロナ禍を乗り切れたのはリーマンショックを経験したからです。

 私は2013年、35歳のときに社長に就任しました。父と社長交代の約束をしたのはその5年前、ちょうどリーマンショックのころです。当時、わが社の売り上げは大幅に減少し、赤字が積み上がったことで全社員の給料削減とリストラを行いました。その結果、「社員を道具扱いするなんて信用できない」と不満が噴出。退職する社員が続出しました。社内には問題が山積みでした。

若者に選ばれる企業づくり

 そんな中、同友会での学びを通して「全社一丸体制の会社をめざす」と決めました。現在は毎年経営指針書を作成・製本して配布しており、全体会議やタウンミーティングなど、自社のビジョンを共有する機会もつくっています。伝わりにくい内容は、ビジョンムービーも作成し、新規事業について思いを共有しています。

 若者に選ばれる会社でありたいという思いを強く持っていたため、同友会で学んだことにはすべて取り組むようにし、中でも共同求人活動には積極的に参加しました。初めて合同企業説明会に参加した際に、若者に選ばれる会社とは「働きがい(働きやすさ+やりがい)」のある会社だと学びました。そこで、自社を働きがいがある会社にするために、社内で委員会活動に取り組み始めました。それによって「自分たちの会社は自分たちの手でよくする」という意識の醸成や、多様な役割を経験してもらうことで社員の成長につながり、社内のコミュニケーションも活性化しています。また、社員の声を聞く仕組みとして社長面談や社員満足度調査にも取り組み、こうした取り組みを通じ、主体的に、そして、仕事に誇りを持つように変化してきました。

社員と共に成長する環境づくり

 経営理念に「社員と共に発展する」こと、経営方針に「社員の夢が実現できる会社をめざす」ことを掲げています。そのために、チャレンジできる環境づくりや学習意欲が持てる環境づくりに取り組んでいます。

 プロジェクト制度を設けて、DXの推進など社内の課題解決に向けて挑戦できる環境をつくったり、展示会への参加や他社見学などの機会を設けることで学習意欲向上に取り組んだり、キャリアや役職に応じた研修・表彰制度を設けたりもしています。

 手作りの新入社員教育マニュアルも大切にしています。部署や顔写真、趣味などを一目で確認できる社員紹介を掲載したり、新入社員研修のカリキュラムを可視化したりしたものです。各部署が先生役となり、それぞれの仕事や技術を知る「スタディミーティング」や、新技術・機器に関する情報を発信する「ブンカの豆知識」(不定期刊行)といった取り組みもあります。

 そして最も大切にしているのが、「講習レポート」です。学んだことをアウトプットする機会になり、内容を共有することで社内全体での学びにもつながります。レポートに対するコメントをきっかけにコミュニケーションも活性化しています。

 こうした取り組みを通じて、リーマンショック時と比べて社員数・売り上げは倍増しました。休日は30日以上増え、残業時間も減少していますが、1人当たりの生産性は向上させています。最近では社員のお子さんが入社してくれた事例もあり、親が子どもに勧めたい会社になれたことを誇らしく感じます。今後、体験学習やイベントなどの地域づくりの取り組みも継続していくことで、地域から求められる100年続く会社をめざしていきます。

(第9回中同協共同求人・社員教育合同委員会(2023年9月7日)実践報告より)*峯元氏は、来年3月に開催される第54回中小企業問題全国研究集会in三重の分科会で報告者として登壇します。

会社概要

設立:1953年
事業内容:各種看板の企画・製作・施工・メンテナンス
従業員数:79名(社員62名、パート・アルバイト17名)
URL:https://bunkakougeisya.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2023年 12月 15日号より