【特集】第22回障害者問題全国交流会in愛知
対等な関わりから信頼が生まれる~語り合い、信頼し合い、明日を拓こう!

 10月19~20日、第22回障害者問題全国交流会in愛知(障全交)が開催され、45同友会と中同協から595名が参加しました。今回の特集では、全体会のあいさつ、まとめと初日の課題提起の内容を紹介します。

【主催者代表あいさつ】
高橋 正志氏(中同協障害者問題委員長)

愛知同友会の皆さま、実行委員会の皆さま、ここまでの準備で予測しないようなことが起き、大変苦労されたと思います。愛知で開催される障全交に参加してほしいと全国各地を回り、声掛けをしていた副実行委員長の杉浦さんが長崎の地でお亡くなりになりました。絶対に成功させたいという強い気持ちがある方で、この場に参加できなかったことは大変無念だと思います。なぜ杉浦さんをはじめ愛知同友会の皆さまがここまで愛知開催にこだわっていたのか。それは、愛知が障害者雇用運動発祥の地だからです。その思いがぎっしりとつまった分科会・パネルディスカッションとなっていますので、しっかりと学びましょう。

誰もが幸せを感じられるような、よりよい地域社会づくりを推進してきた経営者団体として、全国各地で中小企業家同友会に対する評価と期待が高まってきています。それは、同友会が「人を生かす経営」「人間尊重の経営」を掲げ、人を大切にしている経営者団体だからです。その根幹にあるのが「自主・民主・連帯」の理念です。その第3層では、かけがえのない命を大切にしていこうと謳(うた)われています。争いのない平和な社会をめざそうと謳っている理念でもあります。そして、第4層は「生きる・くらしを守る・人間らしく生きる」です。この理念があるからこそ、すべての人が幸せになれる共生社会というものが実現されます。かけがえのない命を大切にし、みんなで助け合って働き、1人1人が人間らしく生きられる社会を共生社会と言うのではないでしょうか。

この2日間、しっかりと学び、そして学んだことを実践して、地域の中でなくてはならない、よい会社になっていきましょう。

【開催地代表あいさつ】
高瀬 喜照氏(愛知同友会会長)

障害者雇用運動発祥の地・愛知においでくださりありがとうございます。本日は行政の方々にも多数ご参加をいただき、改めてお礼申し上げます。愛知では25年ぶりの障全交が開催となります。「対等な関わりから信頼が生まれる 語り合い、信頼し合い、明日を拓こう!」をテーマとし、愛知同友会では2年ほど前から準備をしてきました。

愛知同友会の先輩方は、委員会発足当時から障害者雇用に取り組まれています。きっかけは、障害者に関わる事業所が経営的に非常に苦しくなったとき、同友会のメンバーが助けたことだそうです。

今回、愛知同友会では障全交に向けて事前学習会を行いました。その中で人権問題を学ぶ機会がありましたが、人権問題を解決していくうえでも「人間尊重」が重要であると改めて感じました。コロナ禍が落ち着き、新しい時代が始まっている中で、一番大事なことは人間尊重の考え方です。物価高、格差の拡大、高齢化、人手不足など経営に関わる問題は山積みですが、そういった中においても、障害の有無に関わらずすべての人が安心して暮らせる社会を築いていくことが同友会のめざす姿です。

2日間にわたり、人間尊重の経営をするために具体的にどんなことが必要なのかを議論しながら、多くの学びを得られる交流会としたいと思います。実りある有意義な会となることを祈念いたしまして、あいさつに代えさせていただきます。

【実行委員長あいさつ】
小出 晶子氏(愛知同友会理事)

25年ぶりに愛知での開催となった障全交はいかがでしたでしょうか?

新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの対立。25年前とは比べようもないほど世の中は激変しました。そのような中、同友会が追い求めている人間尊重の理念は、ますます揺るぎないものとなっています。

今回の障全交は「対等」「1社1人関わる・愛知モデル」をキーワードに、課題提起・分科会・全体会を企画しました。「生きる・くらしを守る・人間らしく生きる」と愚直に学んできた私たちが、今後どのような運動をしていくのかを考えるきっかけになれば幸いです。

副実行委員長だった杉浦昭男さんが、自社の朝礼での体験を話されたことがあります。「なぜ人は4足歩行から2足歩行になったのか」という問いに対して、障害のある社員が「それは幸せになりたかったから」と答えたそうです。この幸せになりたいという気持ちが生きていく原点であり、幸せが働くことであるなら、願いをかなえられる環境をつくることも経営者の大切な役割です。それぞれが力を付けてそれぞれの生き方をする、そのような学びができた障全交だったと思います。

第22回障全交は幕を閉じますが、これで終わりではありません。学んで実践、これが私たち同友会の進むべき道です。先人たちの思いを受け継ぎ、次に伝えるべきことをみんなで確認しながら進んでいきましょう。

【2日間のまとめ】加藤 明彦氏(中同協副会長/人を生かす経営推進協議会代表)

私はよく「同友会らしさ」と言いますが、それは人間を尊重する企業づくりそのものです。われわれは、「労使見解」の実践を通して、人が生きる社会をつくっていくことが求められているということを確認したいと思います。

1つ目は、働きやすい環境づくりです。わが社では、障害者を配置する際にミスを防ぐために事前に職場環境の改善を行います。それによって、人間はミスをすると想定し、改善を続けることでよい職場風土がつくられてきました。つまり、違いを認めること、お互いの特色や価値を認め合える風土を作っていくことが大切です。

2つ目は、経営指針の実践です。経営理念を基に、1人1人の持ち味、役割を明確にし、健常者も障害者も職場の中で一緒に働ける環境をどうつくっていくのかを指針の中で展開して、具体的な方針、計画を立てて実行していくことです。大切なことは実践しているかどうかです。指針、採用、共育の土台に障害者問題は位置づくと考えます。

3つ目は、障害者と1社1人関わることです。知らないからこそ関心を持って「他人事」から「自分事」へシフトチェンジし、われわれが労使見解で学んでいるのは経営者の姿勢と覚悟ですから、障害者雇用は経営者として当然のことです。まず、経営者自らの姿勢が変わり、社員が気づくことで会社が変わります。私は、社内での昼食は障害のある社員と共にしています。経営者が積極的に関わる姿勢を社員は見ています。すると、社員も関心を持ち、会話が生まれます。障害者と1社1人関わることは決して他人事ではありません。

人間尊重の経営の考え方の基本となる自主・民主・連帯の精神が『労使見解』に結実するという本質を改めて学び、企業・社会において実践していきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2023年 12月 15日号より