第8回経営労働問題全国交流会【実践報告】 オモシろくなき(?)経営指針を、社員教育でオモシろく!~社員との経営指針更新が自社と社員の成長の鍵~ 香川同友会共同求人委員長/三有研器(株)代表取締役 有岡 康介氏

 8月31日~9月1日、第8回経営労働問題全国交流会が開催されました。香川同友会共同求人委員長の有岡康介氏と山口同友会経営労働委員長の津森昌幸氏の実践報告を紹介します。

 1954年に祖父が創業し、2016年に4代目として代表を引き継ぎました。社員数は16名、工業用刃物の卸売と再研磨加工をしています。

 2015年に香川同友会に入会して共同求人委員会に参加し、経営指針を創る会を受講しました。創る会で自社や社員のすばらしさに気づき、経営に対するヤル気が出ました。しかし、翌年の代表就任と同時に開催した経営指針発表会は、社員にドタキャンされるという波乱含みのスタートでした。発表後も労働環境の整備や営業に力を入れるものの散々な日が続き、採用も内定を出した全員から辞退されてしまうような状況でした。

 経営指針の共有の難しさを痛感していた事業承継後2年目に、先輩会員から社員教育委員会で開催している幹部社員共育塾(現・経営指針を更新する会)を勧められ、幹部社員、幹部候補と共に4名で受講しました。「企業変革支援プログラム」を活用しながら幹部社員が中心となって経営指針書を更新するという企画です。わかりやすい経営指針書をめざして、計画内容が具体的に伝わるように行動をベースに短い文章にまとめるなど工夫を凝らしました。

 経営指針の更新で理念の下に3つの行動方針をつくりました。同時に行った10年ビジョンの更新では、社員から10年後の理想の姿を出してもらい、まとめていきました。社員は計画を実行した先にビジョン達成があるという理解が進み、会社の未来が自分事になってワクワク感がアップしたようです。受講後も経営指針の毎年の更新に併せて少しずつ社員が関わる機会を増やしていきました。

 2022年の経営指針を更新する会では、改訂された『企業変革支援プログラムVer.2』を活用しました。自社のことだけでなく地域や業界のことも盛り込まれ、社員の目線が高まり視野が広がったように感じました。

 「企業変革支援プログラム」STEP1、2、Ver.2を社員とともに取り組む中で、社員との信頼関係の温度差が明確になり、独り善がりの経営になっていた現実にショックを受けることもありました。「企業変革支援プログラム」は経営の要素を項目別に分類して数値化されているので、ギャップの大きな項目が一目瞭然、課題として受け止めやすくなっています。「Ver.2」では「よい会社」の内容がより具体的に表現されるようになり、社員からの評価も厳しくなりました。志を同じくする社員とともによい会社の実現に向けて経営指針書に課題として取り上げ、取り組んでいく予定です。

 私は香川同友会の取り組みに参加させてもらって「経営することがオモシロい」と感じられるようになりました。これまでの経験から、会社をよくしていくには4委員会(経営労働委員会、共同求人委員会、社員教育委員会、障害者問題委員会(香川では多様性委員会))に関する分野をゆっくりでもいいので、全部に取り組まないといけないと思います。4人5脚みたいなイメージです。どこか1つ欠けてもバランスが悪く、つまずいてしまいます。この積み重ねが「小さな一流企業」に近づく道だと信じています。

「中小企業家しんぶん」 2023年 12月 15日号より