【2023年度共同求人活動から】共同求人活動は社会教育運動 企業と地域の未来を創る

求人・就職活動の動向

 2023年10月の有効求人倍率は1・30倍で、昨年同時期と同水準でした。リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査では、 2024年3月卒業予定の大卒求人倍率は1・71倍と2023年卒の1・58倍より0・13ポイント上昇し、コロナ禍前の水準(2020年卒1・83倍)に近づきつつあります。

企業規模別に見ると、従業員数300名未満の企業では6・19倍と高水準の一方で、5000名以上の企業では0・41倍となっており、中小企業にとっての採用状況は依然として厳しい状況が続いています。

 Jobway参加企業は643社で前年と横ばい、2023年10月時点のユーザー数は1万4981名で、4月が最も多く2万1731名でした。各同友会での学校訪問や出前授業などの活動がユーザー数に直結しています。Jobwayは、中小企業を最大限に生かす求人ポータルサイトとして2005年に開設し、現在20同友会で利用されています。また、2019年より「求人情報提供ガイドラインに係る適合メディア宣言」制度の運用を開始し、学校や学生への信頼を担保すると同時に労働環境の適正化に向けて自社を改めて見直し、若者に選ばれる企業をめざすことを呼びかけています。学校や学生への周知、参加企業を増やす取り組みなど課題はありますが、今後全国で活用が広がることが期待されます。

教育機関との連携進む

 各同友会では、キャリア教育やインターンシップ、出前講座など学生に「働くこと」の意義や中小企業の役割・魅力を伝える活動が継続して行われています。7月に実施した共同求人・社員教育活動に関する調査によると、活動の特徴として「学校からの協力要請増加」の割合が最も高く、次いで「インターンシップへの協力要請」が続きました。また、連携協定などを締結している学校との独自の取り組みも増えています。

 2022年6月に「インターンシップの推進にあたっての基本的考え方」(三省合意)が改正され、2025年卒からインターンシップの取り扱いが変更になりました。就活の第一歩はインターンシップと考えている学生も多く、採用活動において改正内容やインターンシップの要件など会内での理解と周知が必要です。

 千葉同友会では、「就職指導担当者と中小企業による合同情報交流会」を開催し、変化する就活環境の中で大学と企業が連携してできることはないかを議論し、学生にとって幸せな就職活動の実現をめざして、「1社でできないことを共同の力で」をスローガンに若者に選ばれる企業づくりの活動を推進しています。

 愛知同友会では、1998年より大学生のインターンシップに取り組み、のべ32の大学から2000名を超す学生を受け入れてきました。特徴としては、学生、大学、企業がそれぞれの立場で参加し、共につくりあげていること。働く意味を学び、今後の就職活動に生かすための共育活動の一環としていることがあります。受入企業にとっても自社の現状を学生の視点から知ることができ、採用力の強化や社員教育にも生かすことができるなど、経営者の学びや社内改善にもつながっています。

中小企業の魅力を発信

 中同協共同求人委員会が主体となり、「第4回学生と先生のための中小企業サミット」を6月9日に東京で開催し、36同友会72社の参加がありました。

中小企業サミットは、中小企業の魅力を発信する場の1つとして、学生に自社や地域の魅力を語り、中小企業を就職先の選択肢に入れてもらうことを目的に、2020年からこれまで3回にわたり開催してきました。

 第4回中小企業サミットは、学生に働くことの喜びや自社のやりがいを伝え、インターンシップにつなげることを主な狙いとしました。学生が夏休みなどを利用してインターンシップに参加できるように、開催時期をこれまでの12月から6月に変更。学生向けのイベント名称を「全国インターンシップに行ったら自分発見できた件」として学生の集客にも力を入れ、当日は学生90名のほかに学校関係者など合わせて約120名が参加しました。第5回は2024年6月7日に開催を予定しています。

活動の原点を振り返る

 中同協では、11月16~17日に2023共同求人・社員教育活動全国交流会を鹿児島で開催し、37同友会・中同協から372名が参加しました。「人をもって城となす~新しい時代の採用と共育」をメインテーマに、1日目は産学官連携、三位一体(経営指針・共同求人・社員教育)の経営、採用と教育の3つの分科会が行われました。2日目は「理念に学び、新しい時代に人が生きる経営を」をテーマに川中英章・中同協共同求人委員長と梶谷俊介・中同協社員教育委員長による対談が行われ、同友会における共同求人・社員教育活動の原点を振り返り、ユネスコ学習権宣言にも触れながら、社員自身が自分の歴史を自身でつづる主体者に変わり、いかに幸せに生きるかの原点に立ってそれを追求できる、その権利を保障できる企業になることが、地域も巻き込んだよりよい社会づくりにつながると展開されました。佐藤全・中同協共同求人副委員長は「地域に若者を残すという課題は、学校も行政も企業も同じです。それが今条例を鍵に、それぞれの役割が明確化され、点だった活動が線につながり始めています。その中で地域の中小企業としては、どんな人が来ても育ち合える企業をつくる覚悟が必要です。地域の人材すべてが地域を支えています。われわれも学び続け、同友会の輪を広げ、地域の責任を担っていく覚悟のもと実践していきましょう」と2日間のまとめを行いました。

共同求人活動の真価が問われる時代に

 共同求人活動は単なる人採りの活動ではありません。同友会で学び、採用活動を通して自社を外部評価してもらい、より若者から選ばれる、地域にあてにされる会社へと成長することが目的です。若者の人口流出が課題となる中、地域や社会に向けて活動する共同求人委員会の役割はますます大きくなっています。若者が暮らし、育つことのできる地域をつくり、雇用を創出することが地域経済の発展につながります。共同求人は人を育て、企業を育て、地域をつくる運動です。共同求人活動の輪を広げ、地域にあてにされる企業を増やしていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2023年 12月 25日号より