【経営労働問題全国交流会実践報告】
「企業変革支援プログラム」の活用で“違い”を“理解・信頼・強み”に!
現在新晃形の挑戦 ~ing~新晃自動車工業(株) 代表取締役 辻 尚宏氏 (京都)

 8月31日~9月1日、第8回経営労働問題全国交流会が開催されました。新晃自動車工業(株)代表取締役辻尚宏氏(京都同友会会員)の実践報告を紹介します。

 新晃自動車工業(株)は、1971年に設立し、自動車の整備や販売を行っています。2003年に先代である父から事業承継し、これまでのトップダウン型の企業経営から、社員の自主性を発揮させるために階層型の組織経営に変更しました。しかし、急な組織変更によって、社員との間に軋轢(あつれき)が生じてしまいました。労働環境の改善や就業規則の見直しなどに取り組みましたが、社員からは不満ばかり言われ、「何のために仕事をしているのだろう」と考える日々が続きました。

 2006年に京都同友会の「『人を生かす経営』実践道場」に入門し、経営指針を作成しました。入門したことで、先代の顧客を第1とした経営や社員を大切にするという姿勢を理解することができました。また、私が仕事中に大けがを負った際に母から言われた「社員ではなく、あんたでよかったな」という言葉を思い出し、経営者の責任を自覚するとともに、社員への向き合い方が変わりました。

 社員と信頼関係を構築するために、グループ討論型の会議や個人面談を開始しました。グループ討論では、私がグループ長を務め、社員には『企業変革支援プログラム』に取り組んでもらい、その結果を基に討論を行いました。このような取り組みから、不満ばかりを口にしていた社員の考え方が変わっていきました。また、社内に労働環境委員会を設置し、残業時間の削減や休日の増加などに取り組みました。さらに、経営委員会を設け、経営計画や方針に沿った経営を進めることで、企業変革の成果を感じられるようになっていきました。

 2017年の年度末に、経営委員会で1泊2日のビジョン検討会議を行いました。自動運転技術やEV化が進むことで整備にも高度な技術が求められ、私たちが整備できない時代が来るのではないかと危惧している一方で、今の経営に満足せずに、もっと社員に誇りをもってもらえる会社にしようと決意したタイミングでの会議でした。ビジョンをとことん話し合った結果、規模を拡大してお客様へのサービスを追求していこうと決まりました。このビジョンを経営指針に盛り込んで取り組みを進めたことで、新しい営業所を開設することができました。

 『企業変革支援プログラムVer.2』では新しく企業の社会的責任が追加され、自社でも取り組みを進めています。新しい営業所を開設したことで地域の福祉団体と連携が進み、地域に対して貢献できることが増えました。また、多様性を認め合う社風もできてきたと感じています。きっかけは社会適用訓練事業による障害者雇用です。社員も彼らが働く姿から刺激を受け、仕事に対する意識が向上しました。そこから、海外の実習生も積極的に受け入れ、現在では特定技能に移行し、結婚してお子さんができた方もいます。

 STEP1の時から「付加価値を高める」の項目の数値が低いことが課題でした。これを改善するために、2020年に企画委員会を設置し、お客様により満足していただくために新しいサービスの企画提案を構想しています。今後は全社員にも取り組んでもらい、企業変革を進めていきます。

「中小企業家しんぶん」 2023年 12月 25日号より