人を持って城となす 新しい時代の採用と共育【2023共同求人・社員教育活動全国交流会in鹿児島】

11月16~17日、2023共同求人・社員教育活動全国交流会が鹿児島で開催され、37同友会372名が参加しました。主催者あいさつや開催地あいさつ、3つの分科会の座長報告、全体会のまとめを紹介します。

【主催者あいさつ】人を生かす経営推進協議会代表
中同協 副会長…加藤 明彦氏

この鹿児島では2004年に全国共同求人交流会を開催しており、本交流会は19年ぶりの開催になります。

中同協共同求人委員会では2002年まで、総括会議として各県の委員同士の交流の場を東京と愛知で設けており、私も当時「愛知の共同求人委員長」として参加していました。それを、共同求人委員会のない同友会にも運動を広めようと2003年に全国交流会と名称を変え、東京で開催。そして翌年、地方で開催した最初の場所が鹿児島でした。そしてこの鹿児島同友会は、設立当時から共同求人委員会があり、そこから活動がスタートした経緯もあります。

今回の交流会の開催目的は、
1.自社のみの発展にとどまらず、「企業づくりと地域づくり」の観点から、学びを深める。
2.地域から若者が流出し、採用が大きな課題。行政や金融機関との連携を深め、地域に若者を残し、地域全体で若者を育てる「社会教育運動」を広げるきっかけとする。
3.「人を生かす経営」の実践のもと、同友会における「共同求人・社員教育」の理念を深め、採用と教育が一体となる「企業づくり」を学ぶ。
4.共同求人委員会、社員教育委員会の委員同士が交流を深め、全国的な連携の促進を図る。
以上の4点を掲げています。

ここ数年の課題として、共同求人も社員教育も「研修や合説」などのイベント開催に終始している感があり、共同求人や社員教育の理念が薄れている課題があります。この全国交流会は、各県の役員の方々が参加していますので、同友会運動の体現者として、企業実践を推進する立場ということを認識しながら、学び、それぞれの県で実践してください。

少子化の時代を迎え、人材確保、人件費の高騰、社員の定着など、今後も「人」の問題は大きな経営課題として立ちふさがる中、中小企業は経営環境と社会変化に対応し、事業を維持・発展させなければなりません。同友会がめざす企業づくりを学び、各地で運動を展開していただきたいと思います。

【開催地あいさつ】
鹿児島同友会 代表理事…上田平 孝也氏

みなさん、おはようございます。

本日は鹿児島市より下鶴市長、南日本新聞社より和田常務取締役に、昨日は鹿児島県知事をはじめとする来賓にご臨席を賜りました。中同協からは中山幹事長、加藤副会長にお越しいただきました。誠にありがとうございます。

こうして産学官金・報道の皆さまに参加いただけるのも、同友会運動が地域に根差した運動になっている証だと思います。今回は372名の方にご参加いただきました。これも、人手不足や人件費高騰など人に関わる経営課題が大きくなっている表れだと思います。

昨日の分科会はいかがでしたか。私は第3分科会に参加しましたが、「社員を中心とした経営にしたら業績が変わる」というテーマで、社員の実践を大事にすることが重要だと学びました。

本日はこの後、川中共同求人委員長と梶谷社員教育委員長が対談します。私は23年前に鹿児島同友会に入会、すぐ共同求人委員会に所属しました。その時先輩から「同友会の求人活動は人を採るためだけの活動ではない」と言われました。23年経つ中でその言葉の意味が分かってきたつもりでしたが、まだまだ奥が深いと感じています。

本交流会で学びをさらに深めて、自社に持ち帰り実践して、地域・取引先・社員の皆さんからあてにされる企業・経営者になっていけば、新しい時代を切り開く光り輝く企業になると思います。

座長報告

【第1分科会】産学官連携(パネルディスカッション)(鹿児島)
「若者に選ばれる企業づくり」

パネリスト
鹿児島市産業局長…中馬 秀文氏
志學館大学学長補佐/法学部教授…志賀 玲子氏
(株)コマロック 代表取締役 鹿児島同友会副代表理事/求人・共育委員長…前薗 栄作氏
コーディネーター
(株)現場サポート 代表取締役社長 鹿児島同友会副代表理事/総務委員長…福留 進一氏

若者に選ばれる企業づくりについて、産学官の立場から深め合いました。まず人口流出入の状況や就職の状況を共有。「地元視点」を出発点に、地域の魅力や振興条例、また鹿児島市の取り組みである熱度マネジメントについて学びました。特に熱度マネジメントプロジェクトは担当者の交代後も熱心な議論が持続されており、鹿児島ならではの取り組みとして内外から高い評価を受けていることが紹介されました。

そして、企業が若者に選ばれるためには、待遇・成長・仕事内容・職場環境の4点が重要であると共有しました。また、企業という枠組みを超えて日本全体での人手不足をどう解決するかという課題にも着目。人材の最適配置やそのためのリスキリング、特に経営者自身が学び続けることの大切さを再認識する分科会となりました。同友会としても、そうした経営者が学び続けられる環境づくりと学びの輪を広げる増強を進めていきましょう。

【第2分科会】三位一体(経営指針・共同求人・社員教育)の経営…(北海道)
「全社一丸で新たな未来を創り出す」 ~現状打破の『人を生かす経営』

報告者
(株)ティーピーパック 代表取締役 北海道同友会 代表理事…池川 和人氏
座長
(株)レイジックス 代表取締役 北海道同友会常任理事/全道共同求人委員長…敬禮 匡氏

「三位一体」の実践報告から経営者としての姿勢、社員との関わり方、会社を継承していくための道筋を学び合い、4つの志・覚悟が重要であると確認しました。

(1)「社員の未来に対し、経営者が真剣に向き合う覚悟」。利己ではなく社員のための事業拡大が必要です。(2)「将来を託す原石を探し、迎え入れ、育てる覚悟」。場当たり的な人事は持続しません。持続可能な企業づくりには共同求人への真剣な取り組みが大切です。(3)「社員に会社の発展を実感してもらえる覚悟」。適切な評価・報酬制度を設けるとともに、社員の成長をバックアップできる社員教育が重要です。(4)「労使見解の到達点を事業承継と捉える覚悟」。社員を理解しようとする姿勢を鮮明にし、社員が人としての高みを得ることを望むこと。そしてその先で、社員に経営者を最も信頼できるパートナーと捉えてもらうことをめざすことが重要であること。このことを確認する分科会となりました。

【第3分科会】採用と教育(広島)
「社員を中心とした経営にしたら業績が変わる」

報告者
西研(株) 代表取締役社長 広島同友会 県理事/広島西支部支部長…寺本 博氏
座長
(株)マルコシ代表取締役 広島同友会共同求人Jobway 実行委員会委員長…木原 淳氏

まさに今回の交流会のテーマである「人をもって城となす」に沿った分科会となり、社員を大切にし、社員を中心とした経営の大切さを学び合いました。寺本氏は中小企業といえどもチャレンジを忘れず、社員に惜しみなく愛情を注ぐことの重要性を報告。共同求人を通して採用をし、そしてしっかりとした社員教育を行い社員に定着してもらうこと、その先にこそ社員の能動的な経営への参画があると学びました。

寺本氏は、顧客満足より社員満足を追求しています。そこにはスキルやテクニックを与えて「こうしてやったらこうなるだろう」というような打算は抜き、まずは与えて、そして待つこと。すると自主性を尊重することで社員が成長し、会社を支える人材となり、会社も「人をもって城となす」ことができると確信の持てる分科会となりました。

全体会 まとめ
中同協 共同求人委員会 副委員長 佐藤 全氏

われわれ同友会では地域に若者を残す取り組みを進めていますが、同様に学校もそこに生き残りが懸かっており、行政も人口が減っていくと成り立たなくなります。そういった意味では、産学官は同じ課題を持っていると言えます。

今までどの地域でも、それぞれの立場で課題に対してできることをやって、ということが多かったと思います。取り組みを互いに知ることで共に課題に取り組むことが増えてきていると感じています。そうした取り組みの中で「中小企業振興基本条例」は1つの大きな武器です。鹿児島市の例のように、中小企業振興基本条例をベースにお互いの役割を明確にし、どのような地域づくりをしていくのか、そのための中小企業や学校、行政の役割は何なのか、というように進めていくことが重要です。

本日集まった皆さんが自らの都道府県に戻って、お互いの取り組みが線になり、1つの面として地域を発信できているかという点を点検する必要があると感じました。

記念講演は、原点に返るような深い話で非常に感銘を受けました。社員教育活動は「1つの社会教育運動として、地域の魅力や中小企業で働くことの楽しさ、使命を学校で伝えていく役割がある」、共同求人活動は「共同求人活動で人は採らなくとも、一緒に活動して地域の企業として若者に関わっていこう」と、そうした運動の本質を学びました。

グループ討論では、「新卒採用をしていないので、共同求人の企画に参加すると人を採らないといけないのかな、と少し怖い」という話がありました。「人が採れないから共同求人に参加しない」、そういう方はどの県にもいます。同友会にいろいろな委員会がある中で共同求人委員会が全都道府県にないのはこういった点が大きな要因だと思います。

「採る」ということは企業の継続の上で非常に大事なことです。一方で、中小企業を知ってもらうためには、社員教育委員会と連携しながら働くことの楽しさや中小企業の魅力、活動を伝えていくという役割もあるのです。

入口でよい会社だと思ってもらえたとしても、「なんだこの会社違ったな」と言って毎年大量に募集して大量に退職する会社では困ります。地域の貴重な若者が入社して、社員に「この会社を選んでよかったな」と思ってもらえる企業づくりが必要です。究極的には「自分が後輩に勧めたい」という会社になれば、採用に苦労するということはないのです。

地域に悪い子はいないと思っています。地元の中小企業の経営者として、「どんな人が来ても育ち合える会社をつくっていく」という覚悟が必要です。「人をもって城となす」というテーマもそこに通ずるものがあると感じます。地域の人材すべてがその地域すべてを支えています。われわれも謙虚に学び続けながら、同友会運動も広げつつ、47都道府県、条例を含めて地域の責任を担っていけるよう明日から実践していきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2024年 2月 5日号より