【震災を経験した同友会の教訓に学ぶ】今なお残る震災の爪痕~復興は道半ば、事業継続への備えは不可欠【福島】

 福島県は東日本大震災の発災により人類史上経験の無い「原発事故を伴う複合災害」に遭遇しました。着実に復興は前進していますが、廃炉や風評・風化の問題など、福島県特有の課題は現在も山積しています。

 東日本大震災による死者は4170人(うち震災関連死は2339人)。家屋被害は、全壊1万5479棟、半壊8万3596棟でした。放射性物質による被ばくから住民を防護するために、国から避難指示が発出、多くの市町村に避難指示区域(帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域)が設定され、約16万人(うち県外約6万人、県内約10万人)の県民が避難を余儀なくされました。

 その後避難指示解除が進みましたが、現在もまだ帰還困難区域(約309平方キロメートル)が残されており、いまだに震災時に居住していた場所へ戻れない状態が続いています。令和5年11月時点で避難者は2万6609人(うち県外避難者2万0558人、県内避難者6046人、避難先不明者5人)となっています。

 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は世界に前例のない困難な取り組みであり、作業は長期にわたります。廃炉の主な作業は、燃料の取り出し、燃料デブリの取り出し、汚染水対策、ALPS処理水の処分、廃棄物の処理・処分、原子力施設の解体等となります。現在、福島第一原発構内では1日4000人程度の人が働いています。燃料デブリの取り出しについてはまだ作業方法のめどが立っていません。ALPS処理水の海洋放出は、2月末時点で4回目を行っていますが、国内外の理解納得が得られないまま作業が進んでいるのが現実です。

 福島同友会では2019年2月に、発災直後から8年間にわたり取り組んできた復旧・復興活動の経験と教訓を整理し、「原子力災害を伴う震災復興経営指針」としてまとめ、発表しました。同友会版BCP(非常時対応事業継続計画)として会員の皆さんに活用していただくことを目的としています。その内容(項目)は次の通りです。

「災害の時代」に立ち向かう福島の5つの教訓として、
1.危機意識の日常化を徹底する。
2.防災対応の常態化を構築する。
3.正確な情報を確保する。
4.風評被害への対応を強化する。
5.原発事故への対応を強化する。

非常時対応への日常的な5つの経営課題として、
1.社員教育の徹底を図る。
2.災害用品を常備しておく。
3.避難訓練の実施を定式化する。
4.現金と資金調達には不断に努めておく。
5.その他の経営課題にも対応を怠らない。

非常時対応への本質的な4つの経営課題として、
1.経営指針の見直しに不断に努める。
2.社員教育は危機対応力の確かな保障。
3.地域との関係性構築に日常的に努める。
4.危機対応力の高い企業体質をつくりあげる。

 地域の存続そのものが危機に瀕した時、改めて中小企業は地域の砦「地域インフラ」であることを自覚しました。同友会の仲間と共に地域の期待に高い水準で応えられる企業づくりをめざしましょう。

「中小企業家しんぶん」 2024年 3月 15日号より