中同協企業環境研究センター公開研究会(3月拡大例会)「景況調査に関する情報交換会」事例報告

 3月15日、中同協企業環境研究センター公開研究会「景況調査に関する情報交換会」が開催されました(4月15号既報)。本号では、山崎正則氏(兵庫同友会政策・調査委員長)と堺義洋氏(富山同友会政策委員長)の各同友会独自の景況調査についての事例報告を紹介します。

兵庫同友会での景況調査とは?

兵庫同友会理事・政策・調査委員長 山崎 正則氏((株)上田洋紙店 代表取締役)

 兵庫同友会の景況調査は阪神淡路大震災発生から10カ月後の1995年11月にスタートしました。当時のスローガンである「Network for Tomorrow」の頭文字から「NTレポート」と名付け、年2回の調査を実施、会員企業の実態を内外に発信し続けています。

 経営努力や経営問題に対して記述式のアンケートで得た「中小企業家の声」の掲載や、タイムリーな特別質問項目を設けているほか、経営上の問題点を克服した企業や克服しようと努力している企業の取り組みをインタビュー形式で紹介していることも特徴です。

 調査開始から10数年の回答率は30~40%でしたが、NTレポートの回答率が支部活性化表彰の対象となったことを契機に2017年から50%を超える支部が出てきました。

 中はりま支部(2023年下期、第55回の回答率97%)では、2019年当時の支部長がNTレポートの回答依頼を会員訪問のツールとしたことで回答数が大幅にアップしました。回答はウェブ(e.doyu)ですが、会員各社の経営状況の把握、状況判断に使ってほしいと訪問をして回答依頼をするのです。コロナ禍により会員同士の関わりが難しくなった際にも地道に訪問を続けたことで回答数がアップし、現在では常に回答率90%以上を維持しています。

 今期の全支部中の回答率が1位となった北播支部では、98%とほぼすべての会員から回答がありました。「支部活性化表彰の1等賞になろう」との支部長の号令の下、地道な会社訪問によって回答率アップにつながりました。

 2支部は、景況調査だけでなく会員増強や行事参加率など、全体の活性化表彰でも常に上位にいます。回答率が高い支部には、支部長はじめ運営委員が目標クリアへの責任感を持ち続けているという共通点があります。NTレポートへの回答は会員として当然の行動だと認識していただけるよう地道に声を掛け続けていくことが重要です。

 回答していただいた方へのフィードバックとして、以前は役員会(理事会)で報告をしていましたが、2年前から調査に協力いただいている大学の先生による全会員向けの「NTレポート報告会」を開催しています。また、2023年度に入ってからは各支部でも勉強会が開催されるようになりました。レポートの回答が“経営に役立つ必要不可欠なもの”と感じてもらえるとおのずと回答率は上がると考えています。

 兵庫同友会では各NTレポートのデータをもとに市町村、信用金庫と懇談を、また、報道機関向けには年に1度報告会を実施し、中小企業の実態や特徴的・革新的な企業を取り上げてもらうようにしています。データの外部発信は政策や中小企業環境の改善につながり、自社経営に役立つものであることを会員さんに伝えていきたいです。

 NTレポートの回答は自社経営に生かすためという流れを作ることと同時に、データの信頼性を高め、有益なデータとして説得力を維持していくためにも、今後も回答数へのこだわりを持ち続けていきたいと思います。

NTレポートへのアクセスはこちらから
https://www.hyogo.doyu.jp/secretariat/report/

回答率50%をめざして―景況調査を通じて地域に貢献したい

富山同友会政策委員長 堺 義洋氏(堺義洋税理士事務所 所長)

 富山では年2回景況調査を行っており、直近の調査(2023年7―12月期)の回答率は約42%でした。回答率の推移を見るとコロナの時期に少し低迷しましたが、ウェブ回答に移行したこともあり、今は徐々に上昇しています。となみ野支部では、支部長や幹事が会員に声をかけて回答を促していることから、前回調査の回答率は71%となっています。支部の活気が回答率にもつながっていると感じるので、支部を活性化させ回答率アップをめざしたいと思います。

 景況調査の項目については、継続項目を10項目、追加項目を1項目定めており、時事ネタを盛り込むなど会員が飽きないよう工夫しています。インボイスについて聞いた調査では、ほとんどの会員が何も対応していないという回答だったので、インボイスの勉強会を行いました。調査結果については、当期の結果だけではなく過去数回の結果も含めて、傾向が分かるようにグラフなどで推移を示しています。また、グラフの下にはコメントを記載し、結果から読み取れる傾向などを解説しています。

 さらに、特別質問として県への要望を記載する欄を設け、会員の生の声を集めています。富山同友会の政策委員会では毎年9月に富山県へ政策提言を行っており、中同協の国への政策提言をベースに、会員の生の声を反映させて富山県独自の政策提言を作成し、県に提出しています。当初は政策提言を提出するだけでしたが、現在は事前に資料を送付し、目を通してもらった状態で意見交換会を実施しています。この時、特に注目されるのは「会員の生の声」です。より生の声を届けるために意見交換会には政策委員以外の会員にも出席をお願いし、自社や業界の現状を語ってもらいます。出席が難しい場合は事務局がヒアリングを行い、資料にまとめて提出することもあります。このような活動から県の商工労働部とも良好な関係が築けていると思います。今後は市町村へも景況調査の結果報告や、政策提言の提出を行うべく、政策委員会と支部長が連携して活動を進めていく計画です。

 回答率が上がった一番の要因は事務局の努力です。Googleフォームでアンケートを作成することでスマートフォンでの回答が可能となりました。また、e.doyuでの発信やQRコードを活用し、例会などで集まったときにその場で回答できるよう対応しています。さらに、各支部のLINEで回答協力の要請や、ショートメールで全会員に回答の再度要請を行っています。意見交換会の会員参加についても事務局の声かけのおかげです。このような取り組みから回答率が上がってきました。

 今後は会員への調査のフィードバックを充実させ、アンケート結果が出るのを待ち望んでいる状況をめざします。また、各行政機関とコンタクトが取れるようになってきたので、次は市町村レベルに拡大し、景況調査をきっかけに経営環境の改善に向けて同友会運動を推進します。さらに、景況調査結果に説得力を持たせるためにも、50%超の回答率を継続できる状況をめざして活動を進めます。

「中小企業家しんぶん」 2024年 5月 5日号より