連載 中小企業を働きがいのある職場に 
社員満足を経営理念とする若手中心の建設企業(後編) 
協栄工業(株) 代表取締役 大賀 豊文氏(大分)

 黒瀬直宏・嘉悦大学元教授(特定非営利活動法人アジア中小企業協力機構理事長)が、中小企業の働きがいをキーワードに魅力ある中小企業を取材し、紹介する本連載。今回は、協栄工業(株)(大賀豊文代表取締役、大分同友会会員)の取り組み(後編)を紹介します。

(中編はこちら)

 中編では協栄工業が社員と一体になって待遇改善を進めていることを述べました。同社は職場を働きやすく、働きがいのある場にすることにも努力しています。

働き方改革(生活満足)

 協栄工業は働き方の改革も進め、社員の健康推進、若者活躍、女性活躍、子育て支援に関し、国や大分県から一定のレベルをクリアしているとし、ユースエール認定(厚労省)、おおいた子育て応援企業認定(大分県)、くるみん認定(厚労省)など多くの認定を受けています。ユースエール認定を受けた際、正社員の月平均残業時間が20時間以下、有給休暇取得率が平均70%以上、育児休業等取得率75%以上など基準を超えていましたが、現在はさらに平均残業時間12・7時間、有給休暇取得率90%以上(16・6日)、男女育児休業取得率100%を達成しました。協栄工業では育休制度などの利用を促進する雰囲気が形成されており、「“育休とってとって”という感じで、周囲が2~3カ月前から準備に入ってくれた」(男性社員)そうです。同社では、休暇を取得した人をサポートする流れが自然にできています。相互サポートに役立っているのが情報共有で、どの現場に誰が行き、工程がどこまで進んでいるかなどを共有できるシステムをデジタル技術を使って社内で開発しました。これにより休暇などを取る人の仕事をスムーズに受け継ぐことができます。大賀氏は、相互サポートには製造業の場合は多能工化が重要ですが、施工管理を行う同社の場合は情報共有が多能工化に当たると言っています。

 働き方改革でワーク・ライフ・バランスも進み、社員に「生活満足」をもたらしています。

仲のよい職場(社会満足)

 協栄工業のホームページには社員の声が載せられていますが、社内の人間関係のよさを示すものが多いです。「他の会社から仲のよいのが協栄の1番の強みと言われる」「社内の誰とでもコミュニケーションが取れる」「若い人が多く、先輩もすぐ相談に乗ってくれるのでとても雰囲気がよい」。同社では若い社員が多いため、若年者でも発言しやすく、若手同士の関係も密です。また、後述のメンター制度のため若手を指導する先輩社員との関係も密です。このため水平的、垂直的人間関係の両方でコミュニケーションがよくなっています。人は他者と関係を持ちたいという欲求を持ち、それが満たされることを「社会満足」と呼ぶと、同社は「社会満足」を生み出す場となっています。

成長できる職場(成長満足)

 協栄工業は品質=社員と考え、社員の成長を支援するため、学習環境を整備しています。

 (1)メンター制度:3年間は人材育成期間とし、メンターとなる先輩社員と共に仕事をし、実務を通して学びます。3年後は後輩の育成に回ります。
 (2)集合研修:設備メーカーの製品研修、設計事務所による設備勉強会などが月1回行われます。資格取得に向けた自主勉強会(季節ごと)、階層別研修もあります。
 (3)自己研鑽:eラーニングを導入し、仕事をする上で必要な教育資料を全て社内のイントラネット上に整備、仕事の状況や自分の成長に合わせ、自己ベースで学習できます。
 (4)働き方改革:上記の働き方改革はワーク・ライフ・バランスを推進し、学習環境の整備にもつながります。
 (5)キャリア形成サポート:社員のキャリア形成の悩みに対応し、年に1度のキャリア面談を行っています。キャリア面談は大賀氏が行いますが、「社長だからといって面談の資格があるとは言えない」と考え、キャリアコンサルタントの資格を取得しました。

 大賀氏は「これまで社員が取得した資格や受けた研修などのキャリアをクラウド上にあげて、スマートフォンから各自見ることで、社員が自身の成長を感じられる環境づくりに取り組んでいきます」としています。成長への欲求も人の生得的な欲求であり、自分の成長を実感できることは喜びとなります。協栄工業の成長支援システムは働く者の「成長満足」を生み出しています。

社員の自律性の充足(仕事満足)

 社員の自律性推進も協栄工業のマネジメントの特徴です。前述の働き方に関する各種認定も、近年では社員が自主的に申請し、大賀氏は判を押すだけになっています。自律性とは自分の意志で設定した目的に基づき行動していること、つまり、「統制」されず、自分が自分の主人という状態です。仕事を自律的に行うことは仕事を楽しくし、有能感も味わえますから、仕事満足を生みます。企業で社員が自律的であるにはまず経営理念に納得し、それを内面化していなくてはなりません。納得できない経営理念に従って働くことは強制労働です。協栄工業の経営理念「社員満足第一」は、労働者の共感を呼び、自律性醸成の基盤となっています。

 また、自律性の醸成を狙った施策も講じています。課題解決型の委員会組織の設立です。安全衛生委員会、健康環境委員会、人材育成委員会、生産性向上委員会、労使懇談会などです。月1回の活動ですが、運営は参加者に任せ、自由に活動していること、企業横断的に物事を見るため、全体的な視野を持つことが社員の自律性を醸成しています。

 以上のように、「社員満足第一」という経営理念は、人の生得的欲求に沿った「生活満足」「社会満足」「成長満足」「仕事満足」を生み出し、協栄工業を精神的報酬で満たされた場にしています。中編で述べた社員の経済的報酬の充実と併せ、同社の優れた経営成果の原動力になっています。

会社概要

設立:1970年
社員数:60名
事業内容:総合設備業(管工事、土木工事、水道施設工事、消防設備工事)の設計施工と保守管理
URL:https://www.kyoei-os.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2026年 3月 5日号より